天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第216号

特別展「最澄と天台宗のすべて」 ―東京・九州・京都の国立博物館を巡回―

 天台宗は、宗祖伝教大師一千二百年大遠忌を迎えた記念事業として、今年10月から令和4年にかけて特別展「最澄と天台宗のすべて」(主催・読売新聞社など)を東京、九州、京都の3つの国立博物館で開催する。延暦寺はじめ全国各寺院所蔵の国宝や重要文化財を含む仏像、仏画、経文などが出陳される予定で、宗派の歴史をたどる貴重な機会となる。

 平成23年から祖師先徳鑽仰大法会期間とし、遠忌を迎えた各祖師方に天台宗を挙げて報恩を示す法要や記念事業を展開してきたが、今年は宗祖伝教大師がお亡くなりになられてから1200年を迎えた。

 特別展は、その記念とし、令和3年から4年にかけて、東京、九州、京都にある国立博物館で開催する。大規模な特別展開催は、平成17年の天台宗開宗千二百年記念「最澄と天台の国宝」以来となる。

 出陳予定の寺宝は、兵庫教区一乘寺所蔵の国宝「聖徳太子及び天台高僧像」の全10幅(東京・京都会場のみ。展示期間未定)や、仏像では三岐教区願興寺蔵の重文「薬師如来坐像」(東京会場のみ)、四国教区等妙寺蔵の「菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)」(九州・京都会場のみ)、また東京教区深大寺の秘仏「慈恵大師(元三大師)坐像」は205年ぶりに寺外公開される。

 その他、慈覚大師円仁や恵心僧都源信、徳川家康の側近だった天海大僧正など、各時代で活躍した高僧ゆかりの名宝が展示されるのに加え、全国各地の天台宗寺院が所蔵する国宝や重要文化財を含む貴重な文化財が展示される。

 担当する祖師先徳鑽仰大法会事務局の話では、『法華経』の精神を重んじた天台宗は、広範な支持を得て全国に教線が展開されたことから、開催各館の立地や地域性に重点を置き、各会場で特色ある展示になるという。また、現在大改修中の延暦寺「根本中堂」の関連文化財の公開も予定している。

 詳細は4月中旬に発表予定。天台宗公式ホームページでも案内する。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

わたくしは死んではいけないわたくしが死ぬときあなたがほんたうに死ぬ

永田 和宏

 細胞学者で歌人の永田和宏さんは、同じ歌人の河野裕子さんとおしどり夫婦で知られていました。
河野さんが亡くなった時、悲しみの中で詠んだ歌が冒頭の歌です。また、

あほやなあと笑いのけぞりまた笑ふあなたの椅子に あなたがゐない

という、胸が苦しくなるような喪失感に満ちた歌も詠んでいます。

 人はいつか亡くなり、別れがくる。頭ではわかっていて、心で準備はしていても、背負いきれない悲しみがそこにあります。こんなにつらくて、悲しんでいても、自分以外の人や物や風景は何も変わらない。街ではいつも通りに人や車が行き交い、庭の花はいつも通りに咲き、朝がきて夜がくる。何もかもがいつも通りの中で、その人だけがいない……。

 悲しみはいつか時が解決してくれるといいます。たしかに時間が経つと、少しずつ日常に心がなじむようになるかもしれませんが、大切な人を失った悲しみは、時を経ても決して薄れるわけではありません。
 時には「生きていても仕方がない」と思ってしまうこともあるでしょう。失った人の元へ行くしかないと思い詰めてしまうこともあるかもしれません。
 しかし、そんなあなたが生きていくことが亡くなった人にとって大切なことなのです。その人の素晴らしさ、生きていた軌跡をよく知っているあなただからこそ、生きていくことでその人もまたあなたの中で鮮やかに生き続けるのです。

 やがて直接知る人もいなくなり、名前や写真、人から聞いた話だけが残されていく。その時に、この世から本当の意味で遠くなり、死者となるのではないでしょうか。

 最後に、妻の河野さんが病に倒れて亡くなる前日に詠まれた辞世の歌を紹介します。
夫を、家族を、深く愛した人でした。

手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が

鬼手仏心

みんなオンリーワン

 私が住職を務める如意輪寺は、茨城の田園風景を望む小高い丘にあり、寺宝として後西(ごさい)天皇皇子の輪王寺宮公辨(こうべん)法親王(ほっしんのう)御染筆『天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)』の一行書が伝わっている。

 お釈迦様は紀元前5世紀4月8日にお生まれになり、東西南北それぞれに7歩ずつ歩み、天と地を指さして「天上天下(てんじょうてんげ)唯我独尊(ゆいがどくそん)」と言い、さらに「三界皆(さんがいかい)苦(く)我当安比(がとうあんひ)」と語ったと言われています。この世界だれでも私という存在は唯一無二でありそれぞれに尊いというのです。

 三界は人間の本能的な欲と迷いの世界、美しい物質だけの色界、あらゆる欲や物質欲を離れた精神世界の無色界、人は絶えずこの三界に心があると言われています。
 お釈迦さまは、この様な苦の三界にあっても心安らかに保てば三界の苦を離れられると言われています。
 ある剣豪の言葉に「打たれて結構、いやもう一歩進んで打って貰おう」というものがあります。切られまいとして身構えるよりも、切られても良いのだと思うようになると、自然に全身の硬さや迷いが取れて相手の動きや剣先が良く見えるというのです。

 お釈迦さまは、生まれたこの世界がどんなに苦しみと迷いの世界であっても迷うことなく生きる、との誓いの言葉を御誕生の時に語られたのです。

 私たちも、自身の誕生日には唯一無二の存在であるこの命を思い、これからの一年間の目標を誓う日としてはどうでしょうか。

 さらに、誕生日ケーキに、ロウソクを立てるなら、もう一本足して生まれる前の10カ月に感謝してください。
 あなた自身を含めてみんな大切な存在なのです。
 みんな唯一無二のオンリーワンなのですから。

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