天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第188号

第32回
世界宗教者平和の祈りの集い開催
イタリア・ボローニャ

宗教指導者らが平和の架け橋に

 カトリックの信徒団体である聖エジディオ共同体が主催する「世界宗教者平和の祈りの集い」が10月14日から16日まで、イタリア・ボローニャで開催された。
 天台宗からは杉谷義純宗機顧問会会長・妙法院門跡門主を名誉団長とする十一名の使節団を派遣し、諸宗教指導者らと世界平和への祈りを捧げた。

 この集いは1986年にローマ教皇ヨハネ・パウロ二世聖下の呼びかけで、アッシジで開催されて以来、毎年ヨーロッパ各地で開かれており今年で32回を数える。
 今回のテーマは「平和の架け橋」とし、14日の開会式にはイタリア元首相で欧州委員会委員長を務めたロマーノ・プローディ氏をはじめ、ボローニャのマッテオ・ズッピ大司教、ボローニャ市長ら要人が出席し、期待感が示された。また聖エジディオ共同体創設者の一人であるアンドレア・リッカルディ教授からは「橋をかけることで対話が可能となり、平和への道を築ける」と今大会の趣旨が述べられた。
 15日からは市内各所で分科会があり、そのうちの一つで杉谷顧問が「武器のない世界の創造」と題し発言した。
 その中で、「祈りにもとづく対話を通して育まれる信頼関係こそが武器のない世界を実現させる近道である」と提言。軍隊や兵器が全く役に立たないという意味の兵弋無用(ひょうがむよう)を紹介し「宗教が理想論を述べているのではなく、人類の未来における現実の姿を示している。この祈りの集いが真の平和実現に向けて実り多きものとなることを期待する」と語ると、会場は拍手で包まれた。
 最終日の16日には、仏教による「世界平和祈願法要」が営まれ、甘井亮淳財務部長、中村彰恵宗議会議長、今出川行戒延暦寺副執行らの出仕で杉谷顧問を大導師に厳修。祈願文が奉読され、日本から参加した他宗派の僧侶やボローニャ市民と共に世界平和実現を祈願した。
 その後、閉会式会場のマッジョーレ広場まで諸宗教の代表者らが手を取り合って行進。子ども達との平和の交歓などの各セレモニーがあり、最後に平和宣言文が採択された。(写真) (次号詳報)

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

この世で最もお金がかからず、そしておそらく最も効く薬は、言葉だと思います。
優しい言葉や、ポジティブな言葉。
目に見えない病を恥じ、傷を克服して自由になろうとする人を手助けする言葉です。

レディー・ガガ (アメリカ出身のアーティスト)

 優しい言葉は人を癒し、激しい言葉は人を昂揚させ、尖った言葉は人を傷つけます。言葉を放つ方にその気がなくても、受けた相手は放たれた言葉に感情が支配されてしまう。
 SNSなどで「炎上」という言葉も聞くようになって久しいでしょう。発信した側の言葉に対して逆上し、批判や悪口などが殺到して起こる「炎上」は、言葉に感情が支配されている現象といえます。
 言葉とは不思議なものです。言葉はお金などとは違い、発するそばから消えてゆくものなのに、相手に強烈な影響を与えることができます。言葉ひとつで、人を元気にさせることもできるし、苦しめることもできるのです。
それはなぜか。言葉が、発する人の心そのものだからではないでしょうか。
相手からもらう言葉は相手の心そのもの。だからこそ、人は言葉に癒され、傷つくのでしょう。
東日本大震災の後、放射能汚染の風評から次々に外国人スターが来日をキャンセルする中で、いち早く日本を訪問し、世界に日本の良さをアピールしてくれたレディー・ガガさん。世界のトップアーティストで慈善活動にも熱心だった彼女は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいます。
歌い手でもある彼女は、言葉の持つ力をよく知っているのでしょう。
傷ついた心に効く化学物質は存在しません。どんなに高い薬を処方してもらったところで、癒すことはできません。
しかし、その人に周りの人がそっと寄り添い、優しい言葉をかけることで、心は癒され満たされていきます。
優しい言葉と態度で、人を元気にすることができるように日々ありたいと思います。

鬼手仏心

正義の話をしよう  天台宗総務部長 寺本 亮洞

 天台宗では、これまで発展途上国に援助活動を行ってきた。学校建設のお手伝いや寺院建設の補助などである。その時に悩んだのは、私達が援助したお金が全部その事業にわたっていないのではないか、ということである。
 それぞれの国で事情があるのだが、間に入った担当者や役人、業者が一部または大部分をぬいて(着服して)しまうのではないか、という疑念が消えない。
 むろんこれは「正義」ではないし、私などは到底了承しがたいことだ。
 そのようなことに怒るのは私だけではない。
 日本財団理事だった曾野綾子さんは財団が北朝鮮に医薬品を送っていることに「そんなことをしても『人民』には届かないでしょう」と官僚に疑問を投げかけているし「国家と国家の間で行われる莫大な額の援助では、時に国民にいく金はゼロ%だという皮肉はよく聞く」とまでいっている。
 そんな曾野さんが、アフリカの某国で、キリスト教のシスターたちと学校建設に着手したときの話である。
 賄賂や不正の横行するその国では、学校建設だろうが何だろうが外国人とみれば材料費をふっかける。地元では一個5円で売るレンガを日本人なら7円というぐあいである。「絶対に5円以上出さない」と頑張る彼女に、あるアフリカ通の日本人が言うのだ。
 「5円とわかっていても7円で折り合ってやりなさい。日本人は豊かで、相手は貧しい。貧しい人に恵むのは当然です。また、2円高く買ってくれるとなれば、どんな政変が起きても、相手はあなたたちを殺しません。安全保障です」
 これも、ひとつの真理というかローカル・ルールというべきものであろうか。

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