天台宗について

法話集

No.266誘惑が多い時代にどのように生きるか 身安楽行の勧め

 当山への参拝に来られた方が、「何故人里離れたこのような山中にこちらのお寺は建てられたのですか?」と尋ねられ、私は、「僧侶が世俗の誘惑や争いから離れ、静かな環境で仏道の修行に専念するため。」とお答えしたことがある。

 情報化された現代社会では、たとえ人里離れた寺院や離れ小島で生活したとしても、誘惑や争いに巻き込まれてしまう時代である。不審な電話1本やSNSからの勧誘だけで、投資詐欺やロマンス詐欺など、とんでもない犯罪に巻き込まれてしまう。銀行の窓口だけでなく、警察や行政機関は頻繁に注意を呼び掛けている。

 SNSの情報はたしかに有益なものもあるが、私達人間を大いに惑わすものも存在する。人間は、様々な情報を感覚器官で受けとることで、本来慎まなければならない、貪(とん:必要以上に欲しがる心)瞋(じん:怒り) 痴(ち:真理がわからない無知)を掻き立てられてしまう。私は愚者であり、しばしばそのようなことがある。

 仏教には、六根清浄(ろっこんしょうじょう)という教えがあり、人間が持つ六つの感覚を清め、迷いや煩悩を断ち切ることの大切さが説かれている。六根は、〔眼根(視覚)、耳根(聴覚)、鼻根(嗅覚)、舌根(味覚)、身根(皮膚感覚)、意根(心)〕を示す。5つの感覚器官を通じて得た情報が意識に作用することで、人は一喜一憂する。悪意に満ちた情報が拡散する現代では、毎日のようにおぞましい事件が発生している。

 さて、妙法蓮華経安楽行品では、文殊菩薩がお釈迦様に「釈尊が入滅された後、初心の菩薩はどのように法華経を説くとよいでしょうか。」とお尋ねになられている。お釈迦様は、その答えの一つとして、「穏やかなふるまいを保ち、煩わしい環境(六根を惑わす環境)から距離を置き、慈悲の心の実践する(身安楽行)」と説かれている。お釈迦様は、自分自身を戒めて、災難が起こりそうな状況は避け、共に助け合いながら生活することを勧められているのです。

 今日は、誘惑多い社会情勢となっています。どうか皆様も「六根」を正常に保ち、悪意ある情報からご自身を護り、仏様が説かれた「身安楽行」を実践されることで、無事平穏な日々をお過ごしになられることを祈念いたします。


(文・滋賀教区 百濟寺 濱中 亮成)
掲載日:2026年09月01日

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