諸宗教の対話と協力に力を注がれたローマ教皇ヨハネ・パウロU世聖下の提唱により、1986年10月に世界の諸宗教指導者がイタリアの聖地アッシジに集い、それぞれの宗教儀礼で、世界平和を希求する祈りを捧げました。
この集いに参加した第253世天台座主山田惠諦猊下は、「アッシジの精神」を引き継ぎ、日本においても世界平和祈りの集いを執り行うことを世界の宗教者に提言いたしました。日本のさまざまな宗教者もそれぞれの立場で世界平和のための運動を展開しており、宗派を越えたご賛同をいただき、日本宗教代表者会議が主催者となり、1987年8月3日、4日の両日、比叡山山上にて「比叡山宗教サミット『世界宗教者平和の祈りの集い』」が開催され、世界の諸宗教代表者と共に世界の平和を祈ることができました。以来、毎年「平和の祈り」は続けられ、本年は38周年を迎えます。
世界では自国第一主義が頭をもたげ、グローバル社会における分断が深まりつつあります。1987年に発した「比叡山メッセージ」では平和とは、単に戦争がないということではなく、人間どうしの睦み合う融和の状態、人類共同体をいうと明示しています。平和への第一歩は対話です。互いの違いを認め合い、敬意を持って理解し、調和をはかることです。
本年、先の大戦から80年の節目が訪れました。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞されたことが物語っているように、心から平和を希求する私たちは今一度、対話の重要性と人類の営為について顧みる時を迎えたのではないでしょうか。
私たちはこの祈りの集いを通じて培った経験と築き上げた信頼を活かし、世界の諸宗教指導者らとの対話と祈りによる平和活動をこれからも推し進めなければなりません。そして先達らによって紡がれてきた、祈りの精神を次世代に継承することをはかりつつ、真の平和が訪れんことを謹んで祈念申し上げます。
ここに「比叡山宗教サミット38周年『世界平和祈りの集い』」を開催するにあたり、宗教者が持つ使命と責務を宣明し再確認するものであります。
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