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サミットの歴史

比叡山宗教サミット32周年 − 概要

▲ 比叡山宗教サミット32周年「世界平和祈りの集い」

比叡山宗教サミット32周年「世界平和祈りの集い」が8月4日、比叡山延暦寺の一隅を照らす会館前「祈りの広場」で開催された。仏教はじめ、神道、キリスト教、イスラーム、新宗教など国内外から約900名の宗教関係者が参加し、世界の恒久平和実現へ共に祈りを捧げた。

平和の祈り式典 於 一隅会館前「祈りの広場」

▲ 「世界平和祈りの集い」に当たり「お言葉」を述べられる森川宏映天台座主猊下

式典は午後3時から杜多道雄天台宗宗務総長の開式の挨拶で始まった。

天台青少年比叡山の集いに参加した青少年研修生らと、一隅を照らす運動総本部から招待されたタイとインドの子ども達10名も共に折り鶴を奉納した。

比叡山メッセージが朗読された後、続いて森川宏映天台座主猊下がお言葉を読み上げられ、「世界の現実は自国の立場に固執し不信を募らせ、武力による威嚇や武力行使は後を絶ちません。こうした争いによる犠牲者の苦しみと悲しみに心を寄せるとともに暴力と憎悪の連鎖を断ち切り、互いが和する協調の力で慈悲の心を育てねばなりません」と訴えられた。

その後、国内外の諸宗教代表者ら11名が登壇。午後3時半に文殊楼にある鐘楼「世界平和の鐘」が打ち鳴らされると、壇上の代表者たちは会場の参加者とともに平和を願う黙祷を捧げた。

海外からもメッセージが寄せられ、ローマ教皇庁諸宗教対話評議会(PCID)議長のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット司教(代読・駐日ローマ法王庁大使館参事官ヴェチェスラヴ・トゥミル)、パン・ワナメティ世界仏教徒連盟(WFB)会長(代読・和多善秀全日本仏教会総務部長)の平和メッセージが披露された。

また、子どもたちから「平和への思い」と題した作文を、高校生代表の和田真琴さん(高一)、青少年代表の貴船新太さん(中三)が朗読、その思いをうけ、宍野史生扶桑教管長が宗教者の将来に向けた取り組み等を若者たちに約束する言葉を送った。

最後は小堀光實延暦寺執行の挨拶があり、参加者全員で互いに手をつなぎあうよう呼びかけられ、平和への祈りと行動を続けることを誓いあい閉会となった。

子ども達からのメッセージ「平和への思い」

次代を担う2人の子ども達より平和への思いを綴った作文が朗読発表された

子ども達からのメッセージ「平和への思い」(1)
 全日本仏教会関係・高校生代表 和田 真琴さん

▲ 高校生代表 和田 真琴(わだ まこと)さん

『平和への思い』

私は花園中学高等学校に通っています。京都にある臨済宗妙心寺派の学校です。私はこの学校の中高一貫コース「スーパーグローバルZENコース」に在籍し、これまで3年4ヶ月の間、禅と英語を中心とした生活を送ってきました。禅には、私たちが幸せに生きていくためのさまざまな教えがあり、その中には平和に関するものもあります。

さて、みなさんが考える平和とは何でしょうか?人それぞれ考えは違うと思いますが、「なに不自由なく、楽しく幸せに暮らせること」であることは、人間共通の考えと言って良いのではないでしょうか。私は、これに「2つの考え」を付け加えたいと思います。

1つめは、私たちは「戦争について学ぶ必要がある」ということです。私は中学2年生のとき、研修旅行で広島に行きました。そこで、原爆ドームや原爆資料館を自分自身の目で見てきました。その時に感じた戦争の恐ろしさは、決して忘れることができません。戦争は何の罪もない人々から全てを奪います。ものがなくなるだけではありません。人として人間らしく生きる権利や命までも、いとも簡単に奪ってしまうのです。私は戦争の悲惨さを学んだことで、今の私の生活がいかに恵まれているのかに気づくことができました。私は毎日食事をすることができます。清潔な衣類や安心できる家があります。学校に行って学び、したいことや好きなことに挑戦することもできます。戦争について学んでいなければ、このような生活を「当たり前」だと感じていたでしょうし、「十分恵まれた暮らしを送ることができて、あなたは幸せですか?」と問われれば、「幸せです」と答えたと思います。しかし、実際は「本当に幸せである」と感じることはなかったと思います。戦争について学ぶことは、普段の生活の中に「幸せの実感」を呼び起こしてくれるのです。これ以上の豊かさや便利さを追い求めることは、平和には必要ありません。禅の言葉、禅語に「知足(ちそく)」という言葉があります。必要最低限のもので十分幸せであることに気づき、感謝の気持ちをもつことが大切であるという意味です。戦争を学ぶことは、「足るを知り」、今ある幸せに気づくこと。このことが平和に必要である、と私は考えています。

2つめに付け加えたいことは、「平和は、集団としての人間の問題である」ということです。平和について考えるとき、ある人が1人で幸せに暮らしていても、それは平和とは言えません。また、大勢の人が幸せであったとしても、それが残された人々の不幸せの上に築かれたものであれば、これも平和とは言えません。つまり、「国が平和である」ということは、「国中の人々全員が幸せ」でないといけないのです。世界が平和に近づくためには、私たちがお互いに幸せになる道を探さないといけません。そのためには、私は「且緩々(しゃかんかん)」という教えが必要であると思います。この言葉には「落ち着いて、のんびりゆっくりいきなさい」という意味が込められています。私はこれまでに友人とけんかをしたとき、お互い感情的になってなかなか仲直りができなかったことや、親や先生に叱られたとき、反抗的な態度をとってしまったことがあります。みなさんにも、一度はこのような経験があるのではないでしょうか。そのときのことを振り返ってみると、私は決まって、あまりよく考えず、すぐに行動に出てしまっているのです。嫌なことや辛いことがあったとしても、まずは落ち着いて、このようになった原因が何なのかを考えることが大切です。落ち着いてゆっくりじっくり考えれば、もっと良い行動を起こすことができるはずです。この考えは、地域や文化に関係なく、どの国の人にも当てはまることだと思います。「且緩々」という言葉を英語で言い表すと「Take it easy」だと思います。多くの人が幸せになるために、世界中の一人ひとりが「且緩々」の精神で行動することが大切だと思います。このことで、世界の紛争や戦争がすぐに終結するとまではいかないと思いますが、それでも少し世界は変わると思いますし、この変化は世界平和への大きな一歩になるはずです。

私は今まで平和についてここまで深く考えたことはありませんでしたが、今回、このような機会をいただいたことで、改めて平和についてや自分のあり方に気づくことができました。これからも、世界中に「平和」を広げていけるよう、禅を通して考え続けていこうと思います。ありがとうございました。

子ども達からのメッセージ「平和への思い」(2)
 天台青少年比叡山の集い 研修生代表 貴船 新太さん

▲ 天台青少年比叡山の集い 研修生代表 貴船 新太(きぶね あらた)さん

『平和への思い』

『ダイヤモンドより平和がほしい』。僕は、平和について文を書くに当たり、この本を読んだ。本を読み終えた後、複雑な気持ちになった。

この本の筆者である後藤健二さんは、1枚の写真から、世界で一番平均寿命が短い国といわれている、シエラレオネ共和国を訪れることになる。まず、僕が衝撃を受けたのは、この国では子どもを兵士として使うという点だ。子どもは大人と比べて敵に怪しまれる事がないため、兵士として利用される事が多いらしい。

健二さんはこの国で、元・少年兵であったムリアという15歳の少年を取材する。ある時、ムリアに1つの質問をする。「将来、どんな仕事をしたい?」それに対しムリアは、「この国の大統領になって戦争をなくし、平和にしたい」と答えた。自分とほとんど年の変わらない子が、こんなにも深く平和について考えている事に、僕は驚いた反面、とても感動した。

そこで、僕は自分にも平和のために何かできる事はないか考えてみた。僕にとって戦争とは、本やテレビの中で見聞きするものだ。だからこそ知らなければいけないと思う。目をおおいたくなるような光景や、耳をふさぎたくなるような戦争の話を学ぶことで、安易かもしれないが、自分がいかに平和に守られているかを感じることができる。

僕は何の根拠もなく、一年後、一ヵ月後、一週間後、明日もしくは一時間後も、自分が生きている前提で未来を描く。もし、戦争のある国に生まれていたら、今日は一日生きていられた、でも明日はどうなるだろうかと、毎日が目先のことで精一杯になるに違いない。当たり前のように朝起きて、当たり前のように学校へ行き、そして当たり前のように家族や友達と笑い合う。そんな自分の「当たり前」が、実はとても幸せなんだと気付かなくてはいけないと思う。

僕の祖父や父は、お寺の住職だ。毎朝本堂でお経をあげ、祈る。父の書く七夕の短冊には毎年、同じ言葉が書かれている。「世界平和」と。

正直、小さな頃の僕には、意味がよく分からなかった。でも今は考える。そして、こう思う。

自分や家族や友人の平和を感謝するだけではなく、祖父や父のように、僕も世界の平和を祈れるような僧侶になりたい。そして、「少年兵」という言葉がこの世界から消える事を願う。

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