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サミットの歴史

比叡山宗教サミット30周年− 概要

開会式典オープニングムービー

「平和の祈り式典」の模様

平成29年8月3日・4日、比叡山宗教サミット30周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」が、国立京都国際会館並びに将軍塚青龍殿、延暦寺を会場に開催されました。

今回のテーマは「今こそ平和のために協調を〜分裂と憎悪を乗り越えて〜」として、世界18カ国の宗教指導者24名を含めた約2,000人が参加され、世界平和の実現を共に祈りました。

▲ 比叡山宗教サミット30周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」

基調講演・シンポジウム

▲ 開会を宣言する杜多道雄事務総長

8月3日、森川宏映天台座主猊下が名誉顧問を務める日本宗教代表者会議主催の比叡山宗教サミット30周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」が、国立京都国際会館で開幕しました。飢餓や貧困、地球温暖化、核拡散、そして内戦など諸問題解決に向け、今サミットでは「相互理解と連帯」こそが人類に平和と繁栄をもたらすものであることを世界に示すことを目的とされました。

開会式典に先立ち行われたオープニングセレモニーでは、「世界宗教者平和の祈りの集い」の30年の軌跡が映像で紹介されました。

▲ 比叡山宗教サミット30年振り返る
  アルベルト・クワトルッチ聖エジディオ共同体事務局長

開会挨拶では、日本宗教代表者会議事務総長の杜多道雄天台宗宗務総長が、「世界平和を実現するためには、お互いに対話し相互理解を深め、価値観の多様性を認め、共生の思想を共有することが必要」と今サミットの意義を強調。ローマ教皇フランシスコ聖下、パン・ワナメティ世界仏教徒連盟会長、ムハンマド・ビン・アブドルカリーム・アルイーサー世界イスラーム連盟事務総長からも、趣旨に賛同するメッセージが寄せられました。

続いて聖エジディオ共同体のアルベルト・クワトルッチ事務局長が講演し、アッシジから比叡山へ語り継がれた30年を振り返ると共に、これからも固い絆で交流を続けることが約束されました。

基調講演では、明石康元国連事務次長、ウィリアム・ベンドレイ世界宗教者平和会議(WCRP)国際事務総長の2名が講演。

▲ 基調講演(1)
  明石康元国連事務総長

▲ 基調講演(2)
  ウィリアム・ベンドレイWCRP国際事務総長

引き続き行われたシンポジウムでは、杉谷義純事務局顧問がコーディネーターを務め「テロと宗教〜暴力的過激主義に宗教者はどう立ち向かうか〜」をテーマに世界の宗教指導者7名が真摯に議論を交わしました。

シンポジウム終了後には、緊急メッセージとして内戦が続くシリアから来日したアブヌール・モスク代表のファローク・アクビック博士とサワフ博士が登壇し、シリアが抱える現地の実状を多くの宗教者、世界の人々に知ってもらうべく参加者らに訴えました。

▲ シンポジウムのコーディネーターを務める
  杉谷義純事務局顧問

▲ シンポジウムで議論を交わす世界の宗教指導者

シリア ファローク・アクビック博士 緊急メッセージ

▲ シリアからの緊急メッセージ

お集まりの尊敬すべき皆様、どうぞイスラムの挨拶をすることをお許しください。平和と神の慈悲と祝福が、すべての皆様にありますように。

比叡山で行われるこの比叡山宗教サミット30周年の場にお招きいただきましたことを心より御礼申し上げます。

人類は過去2世紀の間に多くの分野で偉大な科学的発展を遂げ、私たちは祖先の絶望的な苦しみから程遠い地上の楽園で生きることが可能になりました。

しかし同時に、人類の道徳や価値観は急激に悪化し、戦争が起こって数千万という無辜の命が刈り取られています。貧困や貧しい人々も大幅に増えています。麻薬、武器、ポルノの取引、そして世界の腐敗が隆盛を極め、世界の資源の最も重要な要素となっています。 これらはすべて、人類が力や政治的目的、金銭的利益のために、道徳的な価値観や行動を捨て去ったことが原因です。

私たちは、日本やアメリカ、北極から南極に至るまでのすべての人々に共通する人道的価値観に基づいた国際的組織を強く必要としていると、固く信じています。価値観を広める団体の活動を促し、価値観を支えるような組織、国、人が私たちには必要です。これは、人道的価値観や慈悲を支持するイスラムのメッセージの一部です。その最も重要な柱は、このメッセージが日の目を見るようにするための、全人類による協力です。

神が預言者ムハンマドに伝えられたコーランには、次のような一節があります。「我々はあなたを人類に対する慈悲としての役割を控えるために遣わしたのではない」。

他の一節には「言いなさい、『主は私を正しい道に導いてくれた。アブラハムの善き宗教に』」とあります。

さらに、「正しさと神への畏れの下に協力しなさい。不道徳や敵意の下に協力してはならない」とあります。

慈悲や人道的価値観を世界に広めるというイスラムのこの教えやメッセージを知れば、現代の悪の唱道者が、悪しき愚かな人々という道具を使って、第一に価値観を否定するために、第二に腐敗を拡大させるためにメディア戦争を仕掛けている理由に気づくことができます。 私は献身的な人々にお願いしたいと思います。価値観を守るために立ち上がり、あらゆる場所のあらゆる人間を、その存在を脅かすような迫りくる危険から守ってください。

私は祈りを捧げます。私たちのこの会合が、善の力を集結させ、その力に活気を与えて目標達成への道を歩ませるための一歩となりますように。私の話は、再度この言葉で締めくくりたいと思います。平和と神の慈悲と祝福が、すべての皆様にありますように。

鎮魂の祈り

▲ 平和への思いを込めて折り鶴を作成する宗教指導者

8月3日、夕刻からは将軍塚青龍殿に移動。まず、青龍殿内において海外招請者を中心に天台宗寺庭婦人指導のもと、各国の宗教指導者が平和へのメッセージを書き込んだ折り鶴の作成や、比叡山高校茶道部による茶菓接待が行われました。

続いて、京都市内を一望できる大舞台に移動し、グレゴリオ聖歌、天台声明、コーラン朗誦が奉納された後、舞台中央に不滅の法灯と平和のメッセージが書かれた折り鶴が入ったオブジェが置かれ、雲間から月明かりの照らす幻想的な空間のなかで約300名の宗教指導者らによって、戦争や自然災害などで失われたすべての命に鎮魂の祈りが捧げられました。

▲ 将軍塚青龍殿大舞台にて捧げられた鎮魂の祈り

分科会・世界平和祈りの式典

▲ 分科会の様子

4日の午前中、「核廃絶と原子力問題を考える」、「貧困の追放と教育の普及」をテーマにそれぞれの分科会が設置され、各分科会の基調発題に基づきコーディネーターを中心に各宗教者らが意見を述べ合いました。

午後からは、会場を「比叡山延暦寺一隅を照らす会館前広場」に移し、世界平和祈りの式典を開催。

本年、30周年を迎える祈りの式典では1回目から続く午後3時30分の「平和の鐘」鐘打に合わせて参加者から黙祷が捧げられました。

▲ 未来の担う天台青少年2名によって
  ステージ中央のオブジェが完成

比叡山山上では「第52回天台青少年比叡山の集い」が開催されており、全国の天台宗寺院の寺族・檀信徒から天台青少年(小・中学生167名)が祈りの式典に参加。会場中央に飾られたオブジェには、天台青少年代表者2名によって手が加えられ、サミット40周年に向けた四重の輪のオブジェが完成し、会場からは盛大な拍手が送られました。

また、未来を担う青少年からは未来の平和へ向けたメッセージが発表され、「世界の人々と仲良く暮らそう」、「尊い命を大切にしよう」と参加者らに訴えました。引き続き行われた「平和の交歓」では、森川宏映天台座主猊下の「平和の努力を誓う。固い絆を!」との発声で宗教者らとともに、集いに参加した会場すべての人々が手を取り合い世界平和の実現を祈りました。

▲ 平和の祈り手を取り合う参加者

最後に、日本宗教代表者会議名誉顧問の庭野日鑛師より「比叡山メッセージ2017」が披露されました。

比叡山メッセージ2017

本年、比叡山宗教サミットは30周年を迎えた。1987年8月、世界の平和を祈るべく、我々は宗教・宗派の垣根を越えてこの地、比叡山に参集した。それは前年10月、諸宗教の指導者が集まったアッシジにおける「世界平和祈願の日」の、あの開かれた精神を継承するものであった。やがて我々と思いを同じくする宗教者によって、世界各地で諸宗教による平和の祈りが捧げられ、宗教間の対話や協働の輪が広がりを見せている。この度の「世界宗教者平和の祈りの集い」に参加した我々は、真摯な祈りを捧げるとともに、世界のすべての人々に心からのメッセージを贈りたいと思う。

今や世界は、排他的傾向が広がり、対立と分裂への動きが深刻化していることを、我々は憂慮する。かつてスマトラ沖大地震や東日本大地震など自然災害が人々を容赦なく襲い、絶望の淵に追いやった。そのとき、国際機関や各国政府の救援はもとより、国内外から多くのボランティアや宗教者が馳せ参じ、支援の手を差し延べたことは記憶に新しい。その国境を越えた人々の献身や連帯の姿に、一筋の光明を見る思いがしたのであった。

ところがその後、ヨーロッパ各地では市民の憩いの場を狙うテロが頻発した。その行動は、政府や公共機関に打撃を与えるばかりでなく、罪のない市民に対するいわれのない攻撃でもあった。それはまた、豊かな消費を謳歌する一部の現代文明への怨念を表すものでもある。一方、中近東などの地域では長期にわたって戦闘や空爆が続き、多くの住民が犠牲になり、また難民生活を余儀なくされている。地球社会には、テロや国家暴力を抑えきれないことへの絶望も広がっている。

我々宗教者はいかなる理由があろうとも、尊いいのちを軽んずる暴力を認めることはできない。格差社会で排除され抑圧されている人々の苦難もまた忘れることはできない。差別や不公正を許さない社会の実現のために、宗教者にもその責任があることを胸に刻み、我々は市民社会と強力な連帯を構築していくことを決意する。

いのちの尊さを考えるとき、環境問題の重要性もまた認識しなければならない。すべてのいのちを育む地球が、人間の欲望の犠牲となることを放置すれば、温暖化がいっそう加速して取り返しのつかない結果となることは自明の理であり、我々は警鐘を鳴らすものである。

人類を滅亡に追いやる核兵器の廃絶は、高齢になった被爆者が存命している今こそ、さらに強く訴えていくべきである。原子力発電所の事故による災害や環境汚染を何度も経験してきた人類社会は、将来世代にきわめて大きな負荷を及ぼす原子力の利用の限界を深く自覚しなければならない。我々は核廃棄物を残す核エネルギーの利用に未来がないことを強く訴える。

いのちの尊さが脅かされている背景には、現代の政治・経済体制の問題があることを認識しなければならない。近年、科学技術と経済機構があいまって人間の欲望を刺激し、そこから利潤を引き出すことのみに追われる傾向が強まっている。たとえば動植物のゲノム改変を推し進めるだけでなく、新たな生命科学を用い人間という種のあり方までも変えてしまう可能性も危惧されている。人類の倫理的自覚が科学技術の発展に追いつかず、特に核開発以後、それは顕著になっていて、人類の福祉のために科学技術を方向づけることがますます困難になってきている。まさに今、世界の諸宗教が培ってきた叡智をもって、倫理的な吟味を踏まえた科学技術の発展を求めるべきときである。

国連は2015年に持続可能な開発目標SDGsを満場一致で採択し、次の15年間に向けてのさまざまな取り組みを始めた。これは、従来のままのありかたでは、地球社会の持続が不可能であるという危機感のもとに、世界を変革するというゆるぎない意志を示すものである。この開発目標は取り組みの過程で「地球上の誰一人として取り残さない」というもので、まさに宗教者の立場と一致しており、これを強く支持したい。

とくにSDGsでは公平で質の高い教育をめざしている。我々も、教育は人格陶冶の第一歩であり、心に平和の砦を築くために欠くことのできないものと考える。すなわち平和を脅かす倫理観の欠如や正義の歪みを正し、欲望を制御し、愛や慈悲に満ちた豊かな人間性を育むために、教育は宗教的基盤とともに、欠くべからざるものであるからだ。したがってこの課題は、宗教コミュニティーがもっとも協力できる分野であることを表明する。一方、宗教コミュニティーの中に暴力や差別を動機づけ、教育の自由と平等を阻害するグループがあれば、我々は辛抱強く説得する責任をもつものである。

これまで人類が直面する諸問題を解決するために、我々は国連などの国際機関と連帯し、また各種条約による枠組みに沿って対処する努力を行ってきた。ところが最近、先進国の中でも経済構造の変動により、格差問題が深刻化するようになり、国際的連帯より自国中心主義が主張されはじめた。しかし先進国の繁栄は自国の努力のみならず、発展途上国に支えられてきた側面を忘れてはならないだろう。平和を考えるとき一番重要なのは、他者の存在を受け容れ、弱者に対する配慮を欠かさないことである。

30年前、我々は「宗教者は常に弱者の側に立つことを心がけねばならない」と世界に宣言した。しかしその責務を十分に果たしてきたとはいい難いことを、率直に告白せざるを得ない。そこで改めてここに決意を新たにし、宗教者の連帯の絆をいっそう強め、「忘己利他」の精神で平和のために献身することを誓うものである。

憎悪と排除からは争いしか生まれない。忍耐強い対話と他者の存在を受け容れる努力こそ、平和への近道であることを強く訴える。そして我々の切なる願いが神仏に聞き届けられるように祈り、行動していくことをここに宣言する。

2017年8月4日

「世界宗教者平和の祈りの集い」参加者一同

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