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サミットの歴史

比叡山宗教サミット8周年− 概要

(比叡山時報 第486号 平成7年8月8日)

終戦50年宗教者平和の祈りの集い
共に考え共に祈る 宗教や民族の垣根を越えて

 比叡山宗教サミット8周年の本年は、終戦50年という重要な年でもある。これを踏まえ天台宗では、宗教7団体に呼びかけ、8月4日、第1部として立正佼成会京都普門館で講演とシンポジウムを開催。また第2部は比叡山上において3時30分の「平和の鐘」を合図に、全戦争犠牲者に黙祷を捧げ不戦の決意を世界に発信した。

 8月4日の比叡山宗教サミット8周年『終戦50年宗教者平和の祈りの集い』は「全日本仏教会」「神社本庁」「日本キリスト教連合会」「教派神道連合会」「新日本宗教団体連合会」の国内五大宗教の連合体と、超宗派で組織される「世界連邦日本宗教委員会」ならびに「世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会」の合計七団体で実行委員会を組織して開催された。
 立正佼成会京都普門館での第1部では、まず哲学者の梅原猛氏による記念講演が「終戦50年に想う」と題して行われた。次に五宗教の代表者により「終戦50年を迎えて・宗教者の責務」をテーマとしたシンポジウムが開かれ、戦争に対する深い懺悔と、宗教者として如何なる世論にも動じない、不戦の決意を誓い合った。
 また、午後からは会場を比叡山上に移し、第2部として「終戦50年宗教者平和の祈りの集い式典」を開催。800名にのぼる列席者が詰め掛けた祈りの広場では、まず団体別の祈りが順次ステージ上で行われた。
 続いて各団体の代表者が梅山圓了天台座主猊下を中心として壇上に整列。3時30分、全山一斉に打ち鳴らされた「平和の鐘」を合図に、宗教や宗派、民族の垣根を越えて、世界のすべての戦争犠牲者に対する慰霊と宗教者の戦争責任に対する反省、さらには恒久平和の希求の願いを込めて、黙祷による真摯な祈りが捧げられた。

繰り返すな悲劇!祈りと行動で平和な地球を

 今回この式典に、特別参加としてムスリム(イスラム教徒)代表者による祈りが加わった。平成2年の比叡山宗教サミット3周年に、京都・宝ヶ池プリンスホテルを会場として、ムルタカ(アラビア語で十字路=出会い)比叡山会議を開催したところ、時を同じくしてイラクのクウェート侵攻(湾岸戦争)が勃発。会議の名において両国並びにイスラム諸国、国連本部へ即時解決措置を取るよう決議文を打電したことを記憶する人は多いであろう。
 教義上、最も頑なに他の宗教を認めようとしなかったイスラム教が、終戦50年という重要な意味を持つ本年、再びあらゆる宗教の代表者と共に祈りの席に着くことができたことは、世界平和への新たな一歩だと言えよう。
 式典では最後に、人類は元より地球上すべてのもののために、再び絶対に悲劇を繰り返さないことを誓う参加者および参加団体の総意として「終戦50年宗教者平和の祈りの集いメッセージ」を採択。全宗教者が祈りと行動をもって平和な世界実現に向けて邁進する不戦の決議文を全世界に発信したのである。

平和のメッセージ

 終戦50年を迎えた。思い起こせば、あのいまわしい戦争は、当時の全世界75カ国中63カ国を巻き込むという、人類史上未曽有の大戦争となった。その結果、ホロコースト、細菌兵器の使用、そして原子爆弾の投下など、近代文明の歪んだ姿を露呈し、おびただしい数の犠牲者を出すに至った。
 われわれ、ここに参集した諸宗教の代表者は、これらの戦争により、かけがえのない命を失われた全世界の戦没者に対し、心より追悼の祈りを捧げ、おぞましい出来事によるすべての犠牲者の心の傷が、1日も早く癒されるよう、切に願うものである。
 終戦以来、実に半世紀にわたる時が流れた。しかし、人々の心に去来する歳月への思いはさまざまである。消し難い傷跡、忘れ難い怨念、断ち切り難い後悔など、戦争を思うとき、人々の心は今も重くならざるを得ない。
 戦争に対する評価もさまざまである。しかしわれわれ宗教者は、政治的立場を越えて、紛争解決のための紛争を、如何なる理由があっても容認してはならない。振り返れば、われわれは必ずしも平和的立場に立つものではなかった。戦時体制の中で、本来の使命を達成できなかった責任を真摯に反省し、心から懺悔するものである。また同時に、戦場となったアジア及び太平洋地域をはじめとする多くの人々に、耐え難い苦しみを与えたことも、われわれは決して忘れてはならない。
 世界の現状は、今もなお戦争の犠牲により苛酷な過去を背負って生きている人々や、武力紛争、宗教、民族の対立による新たなる犠牲者の発生など、深い苦悩の中にある。われわれ宗教者は、その苦しみを自らのものとして、共に歩む姿勢こそが、平和希求への証しとなると信じる。そしてわれわれは、あらゆる紛争が、暴力を排し、平和的手段によって解決されることを声を大にして訴える。
 戦後50年の節目に当たり、われわれはこの願いが必ずや神仏に聞き入れられることを確信して、世界の宗教者と連帯し、宗教と民族の壁を越え、互いに尊重し合い、祈りと行動をもって、争いのない世界を実現するため邁進する誓いを、ここに新たにするものである。

1995年8月4日


終戦50年宗教者平和の祈りの集いフォーラム 全ての宗教者が不戦を決意
終戦50年に想う−梅原猛氏が記念講演
宗教者の責務−各宗教代表者が語る

 終戦50年宗教者平和の祈りの集い第1部のフォーラムは、8月4日午前9時45分、立正佼成会京都普門館を会場に開会した。
 まず、立正佼成会京都教会長の後藤益己氏が開会の辞を述べると共に、同氏の合図で参加者全員による世界の戦争犠牲者への黙祷が捧げられた。
 次に主催者を代表して実行委員長の杉谷義純天台宗務総長があいさつに立ち、開催趣旨と宗教宗派を越えて一堂に集った参加者に対する謝辞が述べられた。
 続いて、哲学者の梅原猛氏を講演に迎え『終戦50年に想う』と題して記念講演を開催。さらに『終戦50年を迎えて・宗教者の責務』をテーマに、宗教五団体からの代表者をパネリストとするシンポジウムが開かれた。ここでは、各代表者が終戦50年に対するそれぞれの立場と見解を述べた後、奥田宗弘大本本部副本部長がコーディネーターとなってパネルディスカッションを行った。
 まず「教派神道連合会」を代表して、神理教本院副管長の巫部倭文彦氏は「終戦50年を迎えた今、過去を清算するのではなく、過去の重みを充分知り、その歴史の上に今日の自分が存在していることを心に刻み込むことが大切である。そして、宗教道徳心の向上をはかることが最も大切である」と述べられた。
 次に「全日本仏教会」を代表する佛教大学元学長の水谷幸正氏は「戦争協力に対する懺悔は元より、戦後50年間の仏教者の在り方についても大いに懺悔しなければならない」とした上で「(1)責務という語の重さを充分自覚する。(2)忘己利他の菩薩精神の大切さを痛感する。(3)21世紀の理念といわれる共生は仏教の根本思想であり、これを社会的に実践する。(4)葬式の重要性を再確認する。(5)国内の社会活動と国際交流活動に具体的な共通目標を設定する。(6)平和の祈りと共に、各人のできることから着実に実践をする。(7)宗教者は、平和のためにはいかなる理由があろうと説を曲げてはならない」との提言が述べられた。
 さらに「日本キリスト教連合会」を代表して、フランシスコ会神父のルスカ・ホルスティンク氏は「戦争の罪深さを認識し、平和実現に全力を尽くす」と決意を述べ、「平和な社会実現のためには、(1)人権回復の努力、(2)国境を越えたネットワークの拡大、(3)アジアや太平洋地域との共生と援助協力、(4)社会および地球環境の保護、(5)軍備解消の活動、(6)人権尊重と差別解消の努力、(7)青少年に対する平和教育の促進に努める必要がある」と具体的実践活動を提示された。
 また「神社本庁」を代表して、京都大学教授で秩父神宮宮司の薗田稔氏は「悲惨な戦争は繰り返してはいけない。しかし、良き未来を信じつつ、父母弟妹のために死なねばならないと死地に赴いた戦士たちを英霊として鎮魂に努めるべきであり、決して悪霊としてはいけない」と述べられた。
 次に「新日本宗教団体連合会」を代表する善隣教教主の力久隆積氏は「宗教者の責務は、過去への反省と将来の展望である。互いが違いを認め合うことから平和が生まれるのであり、宗教協力を実現し手本となることこそが宗教者の責務である」と提言された。
 そして最後に、全ての参加者が宗教者として不戦と平和への絶え間ない努力を決意した。


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