『心願』(しんがん)

我れいまだ六根相似(ろっこんそうじ)の位を得ざるよりこのかた出仮(しゅっけ)せじ。其の一
(仏とほとんど同じ姿になれぬ内は人々の前に出て布教はしない。)

いまだ理を照らす心を得ざるよりこのかた才芸あらじ。其の二
(仏教の真理を身に付けぬうちは技術、芸術などには手を染めない。)

いまだ浄戒を具足することを得ざるよりこのかた檀主の法会に預からじ。其の三
(戒律を正しく保てぬうちは、施主の法会にたずさわらない。)

いまだ般若の心を得ざるよりこのかた世間の人事の縁務に著(つ)かじ。相似(そうじ)の位を除く。其の四
(すべて空と悟ってとらわれのない心を体得出来ぬうちは、生活のための仕事やつきあいをなどに専念することはしない。仏と同じ姿になれば別である。)

三際の中間に修する所の功徳は独り己が身に受けず、あまねく有識(うしき)に回施(えせ)して、悉く皆無上菩提を得せしめん。其の五
(今の修行の功徳を独り占めにせず、生きとし生けるもののこの上ない悟りのために布施行に尽くしたい。)