天台宗宗務総長 新年ご挨拶

天台宗宗務総長 細野舜海

新年明けましておめでとうございます。

 大樹孝啓天台座主猊下におかれましては、今年百一歳を迎えられ宗徒並びに檀信徒一同、ご同慶の至りに存じます。益々ご健勝にて宗内の諸行事や総本山の法要などに日夜ご精励くださっておられます。ご法体お健やかに、引き続き我々をお導きくださいますようお願い申し上げます。

 昨年十一月十七日付けで天台座主猊下より宗務総長を拝命いたしました。宗徒、寺庭婦人、檀信徒の皆さま、そして一般社会の輿望に応えるべく宗祖大師のみ教えのもと、誠心誠意、宗務運営に務める所存です。わたしは平成十八年に宗議会議員に初当選以来、五期十八年に亘り天台宗宗政に携わって参りました。その間、歴代内局の取り組みは、祖山護持、愛宗護法の念からの宗務運営が一貫されてきたように存じます。その根底には宗祖大師が目指された法華一乗の社会、すなわち仏国土の実現にあります。これまでの経験を活かし、歴代内局が最重要課題として取り組まれてきた「人材の育成」「教えの普及」「寺院の存続」を教団運営の柱に据え、更に「祈り」「求道心」「人づくり」を掲げて宗務に邁進する所存です。

 また、祖師先徳鑽仰大法会は令和五年三月をもって結願を迎えましたが、その記念事業であります比叡山延暦寺根本中堂大改修の工事は現在も鋭意進められております。一千二百年に亘って祈りと伝統を伝え、天台宗徒および檀信徒を含む国民の心の拠り所でもあります文化財を後世に継承することは我々の努めであります。「宗本一致」「本末一如」の精神で、本山護持に尽力して参ります。引き続き、ご法助ご協力を賜りたくお願い申し上げます。

 さて、昨年を振り返りますと元日に能登半島地震が発生し、北陸教区内の各寺院と檀信徒におかれましても甚大な被害を受けられました。その復興途上の中、九月二十一日には豪雨被害に見舞われ、被災地では今も多くの方々が不安な日々を過ごされておられます。犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表し、被害に遭われました皆さまに心よりお見舞い申し上げます。天台宗といたしましても支援活動を継続する所存です。

 近年では、日本のみならず世界でも自然災害が多発しておりますが、これらは地球温暖化による気候変動が原因であり、我々人類が物質的豊かさを追求した結果であるといえましょう。また覇権的な国威行動による戦争や紛争、それに起因する難民問題、貧困や格差社会などの課題が山積しており、誠に憂慮すべき事態となっております。

 このような閉塞感に覆われた社会にこそ、宗祖大師の「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」の教えが、諸問題解決の良薬になると信じて止みません。

 慈悲の心を持つ人材の育成に心血を注がれ、平和な世作りを願われた宗祖大師のみ心を大いに敷衍すべく努めて参ります。

 皆さまのご多幸を心より祈念し、ご挨拶といたします。

令和7年正月
天台宗宗務総長 細野舜海

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