東日本大震災における天台宗の取り組みについて

天台宗の支援活動

温泉・食事・参拝バスツアーの実施天台宗災害対策本部

 天台宗災害対策本部では、現地支援活動の一環として、「温泉・食事・参拝バスツアー」を実施した。これは現地の支援者が発案、対策本部が経費を負担し、5月8日から計6回、東松島市大曲地区などの避難者らを対象に行われた。同地区は、津波にて流失した萬寶院(石川仁徳住職)があり、津波にて壊滅的な被害を受けた。

 実質的なサポートは、自身が被災されながらも支援活動をされている石川住職と茨城教区妙行寺の大宮孝舒住職、また地元で箟岳山ののだけさんと信仰を集める天台宗寺院の箟峯寺一山の住職、寺庭婦人らである。これに、地元涌谷町、市民ボランティアが加わり、宗門が支える形で実現した。

 計画・発案した支援者は、これを平成三年に起こった雲仙普賢岳の噴火災害の折の支援活動をヒントに思い付いたという。同様な支援は、三井造船が石巻市で大型客船を、石巻港に寄港させて約2千人の被災者に食事・入浴・休憩の無料サービスを提供、南三陸町でも行政が中心となって実施されたが、天台宗でも、5月連休明けより第1回目の支援を開始した。

「ゆっくりと温かいお風呂」は被災者の切望である

〈温泉・食事・参拝バスツアー〉

 バスツアーの実施には、10日ほど前に石川住職らが、チラシを配布し参加者を募った。毎回、対象の避難所を絞り希望者を募集した。荷物などの管理は行政の責任者にして頂いた。

 朝、9時に大型バスを配車、1時間ほどで涌谷町の日帰り温泉施設である「わくや天平の湯」に到着、施設の入浴料は涌谷町のご厚意で無料。5月15日の第2回目の支援の際には、町長自ら施設を訪れて「心ゆくまで湯に浸かり疲れを癒し、これまでのストレスを癒して欲しい」と挨拶し、参加者を労った。

地元涌谷町の大橋荘治町長が参加者を労った

 1時間半程ゆっくり湯を利用してもらう。ある女性は「自衛隊の方が用意してくれたお風呂もいいけど、沢山の人が利用するし、なかなかゆっくりはできない。久しぶりの温泉でゆっくり浸かれてありがたい」と語っていた。入浴後は、同町医療センターより派遣された看護師3名が、血圧測定や問診などを行った。また、箟峯寺の寺庭婦人らが、お菓子やソフトクリームを提供。寺婦らもローテーションを組み、毎回数名で支援に万全を期した。その中で「毎日、テレビで津波に被害に遭われた方々を見て、涙しているだけであったけど、少しでもお役に立ててうれしい」と、支援を楽しみにしていたという。

箟峯寺一山の寺庭婦人からお菓子がくばられる 高齢の被災者は、慣れない避難所暮らしで体調をくずしやすい

 昼食は、箟峯寺会館でのジンギスカン。避難所では、保存のできる食べ物が多く、当然、自分では調理できる環境にないので、温かいものは炊き出しなどに限られている。地元医療センターの医師からビールも適量出して貰えればとの指導も。ある参加者は「焼き肉もビールも被災してから初めて。今日は極楽ですよ」と笑顔で語っていた。

 その後、参加者は箟峯寺を参拝したり、境内を散策したりと自由に過ごした。佐々木住職もこちらからあれこれアプローチするのではなく、ゆっくりして頂くことが大事だと考えていたという。また、同会館では、茨城教区などから支援された衣類品が並べられており、参加者は好みのTシャツなどを選んでいた。これは若い人らに好評であった。その後、参加者は、15時に箟峯寺を出発し、避難所への帰路についた。

ひさびさの温かい食事に舌鼓を打つ 茨城教区から提供された衣類を選ぶ 箟峯寺で祈る被災者ら

〈支援活動をサポートした支援者から〉

 今回、6回の活動で282名の方をご支援することができました。毎回、皆さん涙を流しながら感謝の言葉をおくってくださいました。広範囲に亘る被災地域、9万人もの方々からみれば、ほんの僅かな人たちへの支援活動ではありましたが、一隅を照らすことができたと確信しております。現地にて被災しながらも活動され、避難所と折衝して下さった石川住職をはじめ、ご支援を頂きました方々には心より感謝申し上げます。

 今回の支援によりご縁のできた現地の方々に対して継続的な支援を計画しております。まだまだ瓦礫の撤去や海の清掃などは、小さな被災地では、進んでおりません。7月から有志の方々と実施したく検討しています。どうぞこれからもご支援のほどお願いいたします。

ツアーのスケジュール

9:00 大型バス配車・集合・出発
10:00 温泉「わくや天平の湯」を利用
寺庭婦人のお菓子/ソフトクリームなどの提供
看護師による健康診断
12:00 箟峯寺会館での食事(ジンギスカン)
衣類品の提供
13:30 箟峯寺を参拝
自由行動
15:00 帰路へ
16:00 避難所着

ツアーの実施日と参加人数など

実施日 対象地区 参加人数
          (1) 5月8日           東松島市大曲地区避難所二カ所 50名
          (2) 5月15日           東松島市大塩地区避難所二カ所 39名
          (3) 5月22日           東松島市宮戸室浜公民館避難所 70名
          (4) 5月28日           東松島市野蒜のびる地区避難所1 40名
          (5) 6月5日           東松島市野蒜のびる地区避難所2 30名
          (6) 6月12日           東松島市宮戸大浜月浜地区避難所 53名

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