東日本大震災における天台宗の取り組みについて

天台宗の支援活動

TOHOKU ALL FOR ONE PROJECT
~仏教者の社会貢献を考えて~

 山形教区仏教青年会は、災害発生当初より支援活動を積極的に実施している。その中で、教区内の寺院で托鉢や協力を呼びかけ、資金を確保しながら継続的な支援活動を目指した。また、地域や諸団体との連携から幅広い活動を展開している。

4月6日、渡波小学校に入ったJICA(海外青年協力隊)の方の協力のもと、校庭のヘドロの撤去

 今年2月、東日本は豪雪に見舞われた。山形でもテレビで報道されたように記録的な大雪であった。そこで、お年寄りの多い集落に行き、除雪のボランティア活動をしようと計画していたのだが、実行に移せないまま時が過ぎた。

 そして三月十一日がおとずれた。山形は、震度五強であったが、今までに経験したことのない揺れと長さだった。次の瞬間、停電になり信号も消えた。外は吹雪。この時、日本のどこかで大変な事が起こっていると直感したが、テレビもつかず情報が一切入ってこない。携帯電話もつながらない。ようやく情報が得られたのは、電気が復旧した次の日の夜だった。モニターから初めて得る映像は、まるで映画の一齣(ひとこま)のようで、隣県の出来事とは信じられなかった。自分の目で確かめたかったが、燃料はもちろん、食糧等の物資も不足し身動きが取れない。

 ガソリン不足の中、3月24日にようやく燃料を確保することができ、山形仏青の庶務部長丸山晃俊師と支援活動と今後の活動の視察を兼ねて、翌日に、炊き出しに行くこととなった。現地に着くまでの道端には、車が折り重なり瓦礫が散乱し、タイヤがパンクしないか心配であったが、なんとか到着することができた。被災地は、言葉では言い表すことのできない凄まじい状況であった。現地では被災されたのにもかかわらず東雲寺副住職の山田清隆師や崑峯寺一山西之坊の石川幸秀師にご協力いただき、石巻市立女子高等学校にて170食のカレーライスの炊き出しを行うことができた。

 ある被災者の方から「震災後、初めて温かいご飯を食べたよ。ありがとう」というありがたい言葉をいただいた。しかし、「家も車も全部流された。何もないよ。この先どうなるんだろうね」という生々しい言葉も聞いた。この日は、石巻市日和山公園にてご回向をして帰路についた。

 28日には、山形県の蔵王温泉観光協会青年部の方々と共に、石巻市立渡波小学校にて、炊き出しと瓦礫撤去の作業に参加した。ここで活動されているボランティアの方と連絡先を交換し、情報の共有ができるようになった。

〈プロジェクトの立ちあげ〉

 3月31日に、山形教区仏教青年会の役員会を開催し、通常の議題に加え、「ボランティア活動」について協議した。そこで、現場で作業した者らが現地で経験したことや状況を説明し、私たちができる範囲で「小さな避難所での炊き出しや瓦礫の撤去、心のケアまでやろう」と提案したところ、皆の賛成が得られ、毎週水曜日に活動することを決定した。そして『山形天台仏教青年会 TOHOKU ALL FOR ONE PROJECT』が立ちあげされた。

 当然、支援活動にはお金が掛かる。活動資金の確保が課題であった。これには、山形部の寺院境内に立ち、縁日などで托鉢をさせていただこうということになり、当面の資金を確保することができた。

 また、各教区仏青の方々も積極的に托鉢を行っており、皆様より山形仏青の活動へのご理解とご支援を賜り、活動を継続することができた。また、茨城教区の大宮孝舒師や前仏青連盟代表の寺門俊明師らにもお力添いを頂いた。

4月18日、山形教区内寺院の護摩法要に併せて、托鉢を実施

〈支援活動の継続とその成果〉

 第3回目の支援活動となる4月6日には、石巻市立渡波小学校にて泥かき作業を、同13日は石巻市立女子高等学校での炊き出し、20日には石巻市立湊小学校で「豚丼300食」の炊き出しを実施した。22日は東松島市矢本駅前で「山形名物の芋煮を200食とリンゴ」の炊き出し、5月10日は、南郷体育館と下二郷コミュニティーセンターで前回好評であった「豚丼」を提供した。(6月8日迄に支援活動を18回実施)

 現地の状況を鑑みながら、順次、支援活動を実施したが、避難所によってはライフラインが寸断されており、避難所と連絡をとることも困難なことさえあった。

 しかし、連絡のやりとりを重ね、何度も同じ避難所へ足を運ぶことで、避難者の方々の表情の変化から心の変化もうかがうこともでき、信頼関係を構築しながら、少なからず気持ちに活力を与えられるような気がした。

 少しづつの支援ではあるが、被災された方々にとって、僅かでも心の支えになれればと考えている。

3月25日、石巻市立女子高での炊き出し。避難所では、まだ一度しか炊き出しはなかったようで大変喜んでもらえた。ガスが調達できず、焚き火で再加熱した 5月10日の支援活動の様子。お昼の炊き出しに向けて、前日から仕込みを行った 6月8日、いつもの炊き出しに加えて「青空カフェ」のオープン。普通のカフェと異なるのは、僧侶やカウンセラーが各テーブルについて被災者の話し相手になり、今まで溜まったものを吐き出してもらう場所だと言うこと。手ごたえを感じた支援であったという

ご協力頂いた皆さまへ

 5月に入り、山形県のボランティア団体の代表の方とのご縁から、山形県ボランティア支援本部の会議に出席いたしました。その中で、山形県内のボランティア団体の交流会などに参加し、多くの支援者と知り合い連携をとることができ、より広い視点に立って、被災者の要望に応えることができそうです。

 仮設住宅への移動がはじまり、様々な新しい問題も浮上しておりますが、この炊き出しを通じての支援活動に目処がついた頃には、無償提供のカフェを開き「心のケア」をしていこうと計画しております。

 最後になりますが、山形仏青のボランティア活動にご賛同いただき、ご支援下さっている皆様に感謝申し上げます。

合 掌

活動の詳細については次のURLをご覧ください
○ブログ http://tendaibsy.seesaa.net/

山形天台仏教青年会 ボランティア活動実施報告

支援回数 日付 内容 場所 内容
1回目 3/25 炊き出し 石巻市立女子高等学校 カレーライス170食を提供した
2回目 3/28 労働ほか 石巻市立渡波小学校 蔵王温泉青年部と活動
3回目 4/6 労働 石巻市立渡波小学校  
4回目 4/13 炊き出し 石巻市立女子高等学校 豚丼170食を提供した
5回目 4/18 托鉢 宗福院様境内 浄財¥85,092円を集めた
6回目 4/20 炊き出し 石巻市立湊小学校 豚丼300食を提供した
7回目 4/22 托鉢 聖徳寺様境内 浄財¥20,750円を集めた
8回目 4/22 炊き出し 東松島市矢本駅前広場 いも煮200食を提供した
9回目 4/28 托鉢 平泉寺様境内 浄財¥109,414円を集めた
10回目 5/10 炊き出し 南郷体育館下二郷コミュニティセンター 豚丼150食を提供した
11回目 5/14 労働 宮城県石巻市渡波地区  
12回目 5/18 炊き出し 石巻市立女子高等学校 いも煮150食を提供した
13回目 5/21 労働 宮城県石巻市渡波地区  
14回目 5/25 炊き出し 石巻市立女子高等学校 筑前煮150食を提供した
15回目 5/30 物資輸送 東松島大塩地区仮設住宅 米100kg、冷凍餃子を搬送した
16回目 6/1 炊き出し 石巻市立女子高等学校 野菜炒め200食を提供した
17回目 6/3~6 労働 岩手県大槌町  
18回目 6/8 炊き出し
カフェ
東松島大塩地区仮設住宅 ハヤシライス300食を提供した
コーヒーなどのカフェをオープン

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