天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第237号

東海教区 特別授戒会 仏性に目覚め菩薩としての歩みを

 東海教区(山田亮盛宗務所長)は11月5日、北名古屋市の髙田寺(柴田真成住職)を会所に特別授戒会を奉修した。菩薩戒を授かった127名が仏弟子として歩むことを誓った。

 同教区での祖師先徳鑽仰大法会「特別授戒会」は、令和元年11月以来となる。

 午前11時より説戒会が行われ、説戒師の村上圓竜常覺院住職や来賓、関係者らが入堂。奉行の山田宗務所長が挨拶で「授戒会とは生まれながらに持つ仏さまとの絆を自覚し、仏性を目覚めさせる意義ある儀式です」と戒弟らに説いた。また随行長の阿部昌宏天台宗宗務総長は「新しいスタートを切るという思いをもって授戒会に臨んで欲しい」と語り、小寺照依延暦寺副執行からは伝戒和上の堀澤祖門探題大僧正のご経歴などが紹介された。
 
 続いて、説戒師の村上住職から授戒に当たっての心構えや諸作法について判りやすい言葉で伝授された。休憩を挟んだあと、午前11時50分から正授戒会が開会。堀澤伝戒和上は伝教大師が中国で授かった十二門戒儀を一つひとつ順序立てて説示した。そして堀澤伝戒和上が戒弟全員に「おかみそり」を、仏舎利を羯磨師の柴田住職が授けた。

 堀澤伝戒和上は「今日、菩薩戒を受けられ、お釈迦様の直弟子となられました。今日のこの時から菩薩になった気持ちで、自分のために生きるのではなく、周りの方々のために、生きている限り全力で働かせていただきますとの願いを持ち、これからの人生を過ごしてください」と励まされた。

 また柴田住職からは「伝教大師は、自分のことよりも人の幸せを願う菩薩が一人でも多く、日本国中に増えることを願われた。私たちは命を頂いたことに感謝し、その心で人のために尽くしていただきたい」と期待を寄せた。

 なお教授師は延暦寺一山金台院の礒村良定住職が務めた。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

月をこそ ながめなれしか星の夜の 深きあはれを今宵知りぬる

建礼門院右京大夫 (『玉葉集』より)

「もの思いにふけりながら、月をしみじみと眺めることには慣れていたが、星の夜の深い趣を今夜初めて知ったことだ」

 現代では流星群の観測やプラネタリウムなどで月と同様、星を眺める事が文化として定着していますが、和歌の世界では月を題材にしたものと比べ、星を取り上げた和歌はあまり見られません。仕えていた平家が戦いに敗れ没落し、恋人を戦で失った作者が都を離れ比叡山の麓、滋賀県坂本の地を訪れた時に詠まれたもの。 旧暦の12月1日、悲しみの底にいた中で見た夜空の星は都で見た星空の何倍にも輝いて見え、初めてその美しさを知ったとも綴っています。

 名だたる歌人が星を積極的に取り入れなかったように、新たな視点から物事を捉えるというのは大切な事であると分かっていてもなかなか難しいものです。日々生活していくうちにそれまでの経験などから考えが定まってしまい別の視点から見るという発想すら起きない事もあるのではないでしょうか。

 「華は愛惜に散り、草は棄嫌に生う」という教えがありますが、それも視点を変えるきっかけになるのではないでしょうか。同じ植物であるのに花は綺麗だと人に惜しまれつつ散っていき、雑草は生えてくると嫌われるという解釈で、人によって都合が良いか悪いかで判断されているが、それらは因縁によってこの世に生まれた同等の存在なのです。

 傷心の身でありながらも新たな視点で美しさを発見する右京大夫の姿は、現状を悲観するだけではなく前に進んでいくという強い意志の表れのように見えてくるのは、私だけでしょうか。

鬼手仏心

『東海結集』に想う

 去る10月7日名古屋市千種区の覚王山日泰寺を会場に、令和4年度天台仏教青年連盟全国大会『東海結集』が開かれました。

 覚王山日泰寺は、釈尊のご真骨を奉安するまさに、日本を代表する聖地です。お釈迦様を身近に感じられる会場での「結集」は、わが宗の将来を担う若い仏青諸師にとって大変意義深いものがあることでしょう。

 さて、今回の「結集」のテーマは、『伝燈イノベーション~新時代への鍵』でした。「伝燈」は、お釈迦様から天台大師を経て伝教大師へと受け継がれた祖師先徳のみ教え、すなわち燈火の継承であり、時代が変わっても正しく伝えていかなければならないものです。普遍的なものを変えることなく伝えつつも、今後新しい時代を迎えて変わっていかねばならないものもあります。3年ほど前から世界的に新型コロナウイルス感染拡大によってテレワークが推進され、オンラインシステムの導入が加速しました。寺院活動においても、会議、法要などが部分的にオンラインを活用して行われるように変化しています。ところで、今、変えていかねばならないものもあります。それは、「人権に関する事柄」です。

 日本国憲法にあるように、すべての国民は、平等で差別なく平和に暮らす権利があります。宗祖伝教大師は、「己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり」と、お示しになっています。思いやりをもって人と接し、慈悲の心で、生きることが大切であると教えています。

 戦争は人権侵害の極みです。平和であってこその人生です。仏青連盟の「結集」を終えて心から平和を願う今日この頃です。

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