天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第202号

天台宗全国一斉托鉢を実施
―宗祖大師の御精神を現代に生かす―

 天台宗では、毎年12月1日に全国一斉托鉢を実施している。今回で34回を数えており、今では「師走の風物詩」として定着している。「宗祖伝教大師の御精神を現代に生かそう」という趣旨から実施されているこの一斉托鉢は、同日を中心に全国で行われている。寄せられた浄財は、一隅を照らす運動総本部(森定慈仁総本部長)の地球救援募金として、内外の福祉活動への支援に充てられる。

 この「全国一斉托鉢」は、昭和61年(1986)に故山田惠諦天台座主猊下が自ら先頭に立ち、浄財勧募にあたられたことに始まる。

 それ以来、毎年行われてきたが、平成9年(1997)より12月を『地球救援活動強化月間』と定めて、1日を全国一斉托鉢の日とし、一隅を照らす運動の各教区本部、個別寺院単位で実施されてきた。
 托鉢行脚はもとより、街頭募金やバザーなど様々な方法での浄財勧募が行われ、全国各地で多数の方々から心のこもった浄財が寄せられている。

 同日の比叡山麓の大津市坂本地区での托鉢では、森川宏映天台座主猊下をはじめ、杜多道雄天台宗宗務総長、小堀光實延暦寺執行、延暦寺一山住職、天台宗務庁役職員など約100名が参加した。

 伝教大師生誕の生源寺において森川座主猊下を導師に法楽を執り行った後、坂本地区の里道を戸口で読経しながら托鉢行脚。毎年恒例の行事であり、玄関口で待ち受ける人も多く「恵まれない方たちに」との言葉と共に心のこもった浄財が寄せられた。

 その後、戸別托鉢、JRや私鉄の駅前での街頭募金も実施された。この托鉢で寄せられた浄財はNHK歳末たすけあいと同海外たすけあいに寄託された。
 そのほか、全国各地托鉢で寄せられた浄財も、各地の社会福祉協議会や日本赤十字社に寄託される。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

もしも泪(なみだ)がこぼれるように、
こんな笑いがこぼれたら、
どんなに、どんなに、きれいでしょう。

金子 みすゞ

 今回の言葉は金子みすゞの『わらい』という詩の一節です。「こんなわらい」とはどういうものか、冒頭から見てみましょう。

  それはきれいな薔薇(ばら)いろで、
  芥子つぶよりかちいさくて、
  こぼれて土に落ちたとき、
  ぱっと花火がはじけるように、
  おおきな花がひらくのよ。

そして、右に掲げた言葉へと続きます。
 「笑う門には福来たる」「笑って損した者なし」という言葉があるように笑いは良いものを引き寄せる、そんなイメージが定着していますね。また、「笑いは人の薬」とも言い、実際に笑顔は痛みを和らげ、ストレスや病気に効果があることが証明されています。

 そうはいっても常に笑顔でいるということは難しいことです。TPOに応じた振る舞いを要求されることもありますし、精神的に笑顔でいられる状態ではないときも多くあるでしょう。笑顔というのは自分たちが意識する以上に気力が必要なのです。

 『わたしと鳥と鈴と』など数々の名作で知られ、“童謡詩人”として名高い金子みすゞですが、その人生は決して平坦なものではありませんでした。23歳で結婚し、夫にそれまで続けていた創作活動を禁じられます。病気と夫の女性関係に苦しめられた後に離婚、そして娘を引き渡す前日に26年の生涯を自ら閉じました。この詩が作者自身の願いなのかということまでは分かりませんが、短い作家生活の中で作り上げた500編余りの作品は多くの人に愛され、笑顔の源になっていることは間違いないでしょう。

 天台ジャーナルも宗の行事をお知らせするだけにとどまらず、この詩のごとく「ぱっと花火がはじけるように」読者の皆さまを惹きつける、魅力ある紙面作りを目指してまいりますので、本年もどうかよろしくお願いいたします。そして、笑い多き一年になりますように。

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