天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第169号

 3月15日、杜多新内局発足—「祖師先徳鑽仰大法会」「宗教サミット30周年」に全力をー
人材育成を最重要課題として取り組む

3月14日に行われた宗務総長選挙において杜多道雄・東京教区大泉寺住職が選出された。同選挙では、杜多師以外に候補者はなく、無投票当選となった。翌15日には、滋賀院門跡において宗務総長任命式が行われ、森川宏映天台座主猊下より杜多新宗務総長に辞令が親授された。なお、杜多新内局の任期は、平成33年3月14日までの4年間となる。

 このたびの宗務総長選挙は、木ノ下寂俊前宗務総長が去る1月28日に辞任したことを受けて実施されたもの。天台宗の選挙規程により、退任より45日以内に選挙を行うとされており、3月14日に選挙が行われた。
 木ノ下前宗務総長は、昨年来、体調不良が続き、今後の宗務に滞りをきたさないためとして、今回の任期途中での退任となった。
 杜多新宗務総長は、15日の任命式を終えた後の就任記者会見で、新施政の柱として「人材養成」を最重要課題とし、宗門の叡智、組織力を結集して、鋭意取り組んでいきたいと決意を表明した。
 また、「祖師先徳鑽仰大法会」の円成を期すこと、宗務運営の効率化、高度情報通信社会に積極的に対応していくことなどの方針を明らかにした。今夏に迎える「比叡山宗教サミット30周年記念『世界宗教者平和の祈りの集い』」についても、全力で取り組む姿勢を示した。
新内局の略歴
総長(天台宗代表役員)
参務(天台宗責任役員)

宗務総長 杜多 道雄
昭和19年生まれ、72歳。東京教区大泉寺住職。宗務所長一期、天台宗参務(総務部長)一期、布教師会会長歴任。
総務部長 阿部 昌宏
昭和22年生まれ、70歳。九州東教区觀音院住職。宗議会議員一期、天台宗参務(財務部長・総務部長)二期歴任。
法人部長 浅野 玄航
昭和23年生まれ、69歳。南総教区妙音寺住職。宗務所長二期歴任。
財務部長 甘井 亮淳
昭和24年生まれ、67歳。九州西教区大善寺住職。宗務所長三期歴任。
教学部長 森田 玄真
昭和31年生まれ、61歳。兵庫教区圓明寺住職。教区主事一期歴任。
社会部長 林 光俊
昭和18年生まれ、73歳。福島教区金礼寺住職。宗議会議員三期歴任。
一隅を照らす運動総本部長 森定 慈仁
昭和44年生まれ、48歳。延暦寺一山・竜禅院住職。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

人間のためでも、誰のためでもなく、それ自身の存在のために自然が息づいている。そのあたりまえのことを知ることが、いつも驚きだった。

星野道夫

人間は自らの生存のために、自然を相手にしてきました。時には、闘い、時には制御し、利用しながら。 そして、大きな恩寵を受ける時もあれば、手痛い反逆を返されて、甚大な被害を被ったことも数えきれずあります。
 人類と自然の歴史を振り返って見れば、そこには、常に「人間にとって」の自然しかありません。地球上に存在する生命の頂点であり、全ての生き物に君臨する「万物の霊長」としては、当然のことかもしれません。
 写真家の星野さんは、アラスカに魅せられ、その地に住み、厳しい自然の中で生きる動物たちや極北で生活する人々を写真に収めました。その写真集は、今もなお、私たちを魅了し続けています。
 20年ほど前、星野さんは、ロシア・カムチャッカ半島で野営中に、ヒグマに襲われ亡くなります。43歳でした。星野さんを襲ったヒグマは、人に餌付けされたヒグマだったようで、自然への人間の介入が悲劇を生んだとも言えます。星野さんの自然観にそぐわない残念な結果だった気がします。
 星野さんは、動物写真家として有名でしたが、本人自身は、その立ち位置だけではなく、自然写真家というもっと広い立場で活動していたようです。それが、掲げた言葉からうかがわれます。動物も人間も大きな自然の一部であるという思いを、心の底に持っていたのです。
 人類の歴史よりはるか悠久の昔から自然は存在し、ほんのごく最近になってそこに人間が加わって来たに過ぎません。人間のために自然があったのではありません。その視点から見ると、自然は時には冷徹な姿を現しますし、時として慈愛に満ちた顔を見せることもあります。そこに真の自然の息吹を見ることができるのです。 

鬼手仏心

無観戦試合

無観客試合という制裁措置がある。
 欧州サッカーではよく行われるが、日本ではほとんど例がない。
 無観客試合は主としてサポーター(観客)のトラブルに起因する罰則である。
 無観客試合を我々が体験したのは2005年のワールドカップ予選で、日本代表と北朝鮮代表とが戦った一戦だった。
 その前試合で平壌で行われたサッカーW杯アジア予選の北朝鮮対イラン戦で、主審の判定を不服として北朝鮮サポーターが暴徒化し、選手の乗ったバスを取り囲み、1時間半に渡って選手や審判を「軟禁」状態にした「事件」である。FIFAの規律委員会が次の試合を無観客試合に裁定した。
 試合場はタイのバンコクに変更され日本は快勝した。当初予定の平壌だったら何があったかわからない。 
 日本では2014年に浦和レッズ対清水エスパルスの試合に適用された。
 浦和サポーターが差別的な横断幕を掲げたのである。
 無観客試合は、全く歓声が無い。エクササイズのようなものである。6万3700人収容の埼玉スタジアムが無人。試合に入ってもモチベーションは全く上がらず制裁の意味は十分だったという。
 野球では2015年に米メリーランド州ボルティモアで、大リーグのオリオールズ対ホワイトソックスが球史に前例のない無観客試合を行った。
 当時、逮捕された黒人男性が死亡したことで、警察と衝突した住民の一部が暴徒化し町には、非常事態宣言が出されていた。市民に外出するなということである。
 スタンドに人影はなく、勝利したオリオールズの4番で黒人のアダム・ジョーンズ外野手は「スポーツは黒人、白人に関係なく、人々を一つにするものなのに」とコメントした。

ページの先頭へ戻る