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サミットの歴史

比叡山宗教サミット20周年− 概要

(広報天台宗 第34号)

比叡山宗教サミット20周年記念『世界宗教者平和の祈りの集い』

 8月3日・4日、比叡山宗教サミット20周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」が、国立京都国際会館並びに延暦寺を会場に開催され、国内外から約2,000名が参加し、世界平和の祈りが捧げられた。

記念講演・シンポジウム(8月3日)

 8月3日、日本宗教代表者会議(半田孝淳名誉議長)主催の、比叡山宗教サミット20周年記念『世界宗教者平和の祈りの集い』が、国立京都国際会館で開幕した。今回のテーマは「和解と協力」。
 開会式典に先立ち行われたオープニングでは、『世界平和祈りの集い』の20年の軌跡が映像で紹介された。次いで、約4年にも及ぶ内戦で大きな被害を受け、一つの国境の中に二つの国を抱えるという複雑な形をもつ、ボスニア・ヘルツェゴビナから参加した4人の少女と、広島から参加した4人の少女達の、絵とメッセージが披露された。
 ボスニアで「みんなが友達になって、国や民族が違う人達とも、自分と意見が違う人達とも、一緒に楽しいことをたくさんすればいいんだ」と語り、コミュニティー・ガーデンで暮らす少女達は、平和の種をまく言葉として「未来には、宗教間の争いや対立がなくなってほしい」と述べた。

 午後1時30分からの開会式典では、濱中光礼事務総長の開会の挨拶のあと、国連事務総長、ローマ教皇ベネディクト十六世、アズハル総長、世界仏教徒連盟会長のメッセージが披露された。  引き続き、教皇庁諸宗教対話評議会次長のフェリックス・マチャド師(カトリック・バチカン)、イスラム問題・寄進・宣教・善導省イスラム問題審議官のアブドゥラー・アルレヘダン氏(イスラーム・サウディアラビア)による記念講演が行われ、マチャド氏は、宗教者の役割を強調し、対話を通じて世界平和を築き上げることが出来ると述べた。また、アルレヘダン氏は、「ムスリムが他宗教と共に行動し、多くの脅威と闘う機会を作るべきだ」と訴えた。
 シンポジウムでは、杉谷義純事務局顧問をコーディネーターに、『和解と協力―宗教・民族・国境を越えて』のテーマもと、宗教の異なる7人がそれぞれの現状を語った。シンポジウムの最後には、タリバンによる韓国人拉致・殺害に関し、「人命を軽んじる行為は憎悪と荒廃を生むだけで問題の解決にはならない」として、『和解と許し』をもたらす宗教の立場から、早期の人質解放を求める緊急声明を発表した。

フォーラム・世界平和祈りの式典(8月4日)

 4日の午前中は、『諸宗教間の対話と協力―紛争和解から平和構築のために―』、『自然との和解と共生―宗教者は地球環境保全のために何ができるか―』をテーマに、2会場でフォーラムが開かれた。
 午後からは、延暦寺に会場を移し、世界平和祈りの式典が開催された。最初に、『世界平和の鐘』の目録が、ワールドピースベルアソシエーションの吉田富冶郎会長から贈呈された。
 この『世界平和の鐘』は、太平洋戦争直後、戦争の悲惨さ、核廃絶、世界平和を訴えるため「人間の心に響く切実なものを贈りたい」と、故中川千代治氏(元日本国連協会会長)が発願した。1954年、世界融和を願い、当時の国連加盟国65カ国のコインやメダルを溶かして世界平和の鐘を鋳造し、ニューヨークの国連本部に寄贈された。

 今回、比叡山宗教サミット20周年を記念して、ワールドピースベルアソシエーション本部から宗教間の垣根を越えて平和を祈り続けてきた日本の宗教者に対して贈られたもので、ニューヨークの鐘と姉妹の鐘になる。
 新たに設けられた鐘楼堂で、諸宗教代表者による除幕式が行われ、午後3時30分、ボスニア・ヘルツェゴビナと広島の少女達が、二度と戦争が起らないように、二度と核兵器による悲劇が起らないように祈りを込めて、『世界平和の鐘』を打ち初めした。荘厳な響きを合図に、参加者全員が世界平和への黙祷を捧げた。
 主催者を代表して、半田孝淳名誉議長は「平和の鐘の音が、地球の隅々まで響き渡り、人々の心に慈悲と叡智をもたらすよう祈りたい」と挨拶した。

 その後、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教、イスラーム、神道など各国の宗教代表者が、正装しそれぞれの宗教儀式に則り敬虔なる平和の祈りを捧げた。
 引き続き『天台青少年比叡山の集い』に全国から参加している青少年達が、世界平和を祈りながら折った千羽鶴で、ボスニア・広島の子ども達と共に、平和な地球を表す地球型オブジェが創られた。
 そして最後に、「愛と慈悲に基づく『和解と許し』によってこそ初めて平和がもたらされることを強く確信する」との比叡山メッセージ2007が披露され、約1,000人の参加者は拍手で賛同し、2日間にわたる世界平和祈りの集いは幕を閉じた。


アフガニスタンにおける「韓国人人質事件」に対する緊急声明

比叡山宗教サミット20周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」に参集した諸宗教指導者(仏教、神道、キリスト教、ユダヤ教、イスラーム、ゾロアスター教、民族宗教、諸教)は、今般、アフガニスタンで発生した「韓国人人質事件」に対し、ここに緊急声明を発表する。

ここに集うわれわれ宗教者は、人質となった韓国人21名の1日も早い解放を願う。また、犠牲となられた2名の方に対し、心よりご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に対し、深い哀悼の意を表すものである。

紛争解決の手段として人のいのちを軽んずるような行為は、憎悪と荒廃を生み、さらなる混乱を招くだけで、問題の解決には絶対にならない。むしろ早期の人質解放こそ、問題の解決に光明を見いだす道であると信ずる。

宗教があたかも「対立と憎悪」の震源地であるかのような誤解が世界を覆っている。しかしわれわれは宗教の相互理解と共生への協働を進めてきた経験から、宗教は本来、「和解と許し」をもたらし、「希望なきところに希望を与えるものである」ことを主張するとともに、問題の早期解決を真摯に願うものである。

平成19(2007)年8月3日 比叡山宗教サミット20周年記念
「世界宗教者平和の祈りの集い」参加者一同

比叡山メッセージ2007

 比叡山宗教サミット20周年を迎えるに当たり、世界のすべての人々に心からのメッセージを送りたいと思う。
 今このかけがえのない"生命(いのち)の惑星"地球は、現代人の様々な暴力によって人類史上空前の危機に瀕している。
 2001年9月11日、米国で引き起こされた同時多発テロは、それを象徴的に示すものであった。以来世界各地でテロが続発、多くの無辜の市民が理不尽に次々と尊い生命を奪われるだけでなく、その流れは一向に止まるところを知らない。一方、国際社会がテロに目を奪われている間に、アフリカでは国家の名において堂々と虐殺が行われ、それが見過ごされている。さらには核兵器の拡散がこれらの暴力を助長するようなことになれば、人類の未来は暗転するであろう。広島、長崎の原爆投下による悲劇が、それを如実に物語っている。
 そして人間の営みは、さらに環境問題においても一層深刻な事態を招いている。地球の温暖化は、地球上のすべての生命に死を与えかねない重大な影響をもつものである。今そのことを真剣に考えなければ、取り返しのつかないことになろう。
 われわれが、直面しているこれらの問題を考えるとき、その暴力の原因はわれわれ自身に行きつくことを知らなければならない。
 先進国や石油産出国でのテロが大きく報道され、発展途上国における殺戮が無視されている状況は、近代社会がいつの間にか、神仏にかわって経済至上主義を最高の規範としていることの証左であろう。その結果、人々が物の豊かさを平等に享受するのではなく、富の偏在と差別の増長を生むことになってしまった。このゆがんだ状況は、富を得るための暴力だけでなく、差別を乗り越える手段としての暴力を顕在化させ、貧困や抑圧に苦しむ人々の暴力への共感すら得るものになっている。その結果、殺傷と憎悪の連鎖を生みだすというさらに深刻な状況に至ってしまった。
 そのうえ、民族と宗教の違いは、敵と味方を峻別する装置に追いやられ、対立を激化させる役割を課せられているのである。
 1987年8月、われわれは比叡山において、宗教サミットを開催し、共に世界平和を祈った。これは宗教の違いが紛争の激化を煽ったという過去に対する深い反省に基づくものである。一方宗教者自身が、閉鎖的であり、宗教が異なることによって対立し、あるいはお互いに敬意をもてないのであれば、それは自らの信仰に忠実でないばかりか、人々を誤って導くことに気がついたからである。
 以来20年の歳月が流れる中で、日本の宗教者は宗教の垣根を越えて、国際的な平和の祈りの集いを共催し、宗教間の対話と協力関係を深めてきた。さらに世界各地でも、諸宗教間の相互理解は着実に進められ、共に平和のために祈り、紛争解決や難民の支援などに汗を流してきた。
 ところが、今日の状況を見ると、われわれの努力がいまだ足らざることを率直に認めざるを得ない。そこでわれわれは決意を新たにして、さらに訴え続け るものである。
 宗教そのものは本来対立すべき存在でないこと、さらに「対立と憎悪」からは、解決の道が決して生まれないことを知るべきである。一方、神仏の名の下に紛争を起こしたり、続けることに対し、われわれは強く抗議する。
 そして、対立は相手を力によって倒すことではなく、対話を通じた相互理解を深めることによって、解決の糸口が見つけられるものである。それゆえわれわれは愛と慈悲に基づく「和解と許し」によってこそ、初めて平和がもたらされることを強く確信する。
 われわれはこのことを、改めてイラクをはじめ、紛争の当事者となっている人々に訴えたい。
 さらにわれわれは、一人ひとりが地球温暖化防止のための、ささやかなりとも行動をはじめることを呼びかけるものである。
 しかし平和への道は嶮しい。そこでわれわれは、平和のために一層働くことを誓うと共に、われわれの願いが必ずや、世界の多くの人々の心を通じて、神仏に聞き届けられることを切に祈る。

以上講演抜粋
2007年8月4日
世界宗教者平和の祈りの集い参加者一同


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