東日本大震災における天台宗の取り組みについて

天台宗災害対策本部の取り組み

平成23年3月11日午後2時46分「東北地方太平洋沖地震」発生

〔3月11日〕
【対策本部の設置】
直ちに天台宗務庁内に「天台宗災害対策本部」を設置。各教区宗務所並びに寺院の被災状況について調査を開始した。



天台宗の被災状況
人的被害(死亡者・行方不明者)
僧侶 0名
寺族(家族など) 2名〔1件〕
寺院教会の建物被害
津波消失 3件
被災寺院 821件(全壊・半壊・一部損壊含む)
(5月16日現在)
【天台座主猊下の諭示】
天台宗報号外にて座主猊下「諭示」が発せられる。
諭示 平成二十三年三月十一日発生した国内観測史上最大規模の東北地方太平洋沖地震及び大津波により被災された宗徒はじめ多くの方々に、心よりお見舞い申し上げます。
犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、被災地の一日も早い復興を切に願っております。
平成二十三年三月十二日 天台座主 大僧正 半田孝淳
〔3月11日~〕
【被災状況の調査(1)】
寺院の被災状況の調査を開始。電話による聞き取り、宗務所及び宗務所長からの情報の集約を行った。

〔3月13日〕
【法要関係(1)】
比叡山延暦寺にて「比叡の大護摩」を厳修した。天台座主猊下は祭文の中で、東北地方太平洋沖地震の犠牲者を悼み、被災地の一日も早い復興と、被災者の安寧が祈念された。
・祭文をよまれる半田孝淳天台座主猊下(3月13日・比叡山延暦寺)

〔3月14日〕
【教区対策本部の設置】
下記の教区に「教区対策本部」の設置を依頼した。その後、災害対策の一時活動資金を預託した。
対象教区(12教区): 山形教区・陸奥教区(宮城県・岩手県・青森県)・福島教区・栃木教区・茨城教区・群馬教区・埼玉教区・南総教区(千葉県南部)・北総教区(千葉県北部)・東京教区・神奈川教区(神奈川県・山梨県)・信越教区(長野県・新潟県)
【救援募金の募集】
救援募金活動を開始した。(一隅を照らす運動総本部 地球救援事務局)

〔3月15日~〕
【被災状況の情報公開】
宗徒向けホームページに被災寺院の被害情報を掲載した。

〔3月16日〕
【義援金の寄託】
緊急義援金として三千万円をNHKを通じ、中央共同募金会に寄託した。
・NHK放送センター(東京都渋谷区)にて、大西典良NHK理事、小林和弘中央共同募金副会長に義援金を手渡す阿純孝天台宗宗務総長(対策本部長)ら

〔3月18日〕
【支援物資の募集】
各教区宗務所長宛に支援物資の協力を依頼した。天台宗務庁・茨城教区災害対策本部の2拠点で救援物資の受付を開始した。(4月15日まで) ※支援物資の受付は終了しております

・教区より救援物資を2拠点に物資を集約、被災地のニーズに応じて支援物資を配送
◎主な支援物資の配送状況
◇災害対策本部(天台宗務庁内)
食料品270箱、ミネラルウォーター328箱(4000リットル)、そのほか生活用品など400箱が、中尊寺(岩手県平泉町)、東雲寺(石巻市)、観音寺(気仙沼市)、崑峯寺(涌谷町)などに配送され、各地に届けられた。
◇茨城教区宗務所
米1トンをはじめ多くの食料品のほか、調理用にカセットコンロ200台、ボンベ1000本や生活用品、作業用の軍手・長靴など850品、Tシャツ・靴下・子供服・女性用品など1400着、そのほか文具・ぬいぐるみ・サッカーボールや医療品などを仕分け、仏教青年連盟などが中心となり被災地へ配送した。
【被災者緊急避難の受入寺院の調査】
各宗務所長に被災者緊急避難の受入寺院の調査を開始した。(3月25日まで)

〔3月22日~〕
【被災状況の調査(2)】
陸奥教区(宮城県・岩手県)、福島教区、茨城教区などの現地視察及び、救援物資の配送を行った。
[1]3月22日・23日:阿純孝天台宗宗務総長(災害対策本部長)らが茨城教区を視察し、被害状況について説明を受けた。茨城教区宗務所(茨城県笠間市)には、支援物資の受付・仕分け・配送の中継センターとすることを要請。寺門俊文茨城教区宗務所長(教区災害対策本部長)は、教区内役職員や天台仏教青年連盟と連携を密にし対応していきたいと語った。
[2]3月22日~24日:村上圓竜社会部長・水尾寂芳延暦寺副執行らが福島教区を視察し、現地災害対策本部をはじめ、特に被害の多かった福島県中通り地区の須賀川市など10カ所の寺院を回り、現状について報告を受けた。
[3]3月23日~25日:福恵善高一隅を照らす運動総本部長・小林祖承延暦寺副執行らが山形教区、陸奥教区(宮城県・岩手県内)を視察した。石巻市東雲寺などに救援物資の配送と現地支援拠点の状況確認を行った。
・支援物資の並ぶ東雲寺(石巻市蛇田地区)、天台宗の檀信徒や近隣の人々も多く利用したという [4]3月23日~24日:北総教区(千葉県北部)・埼玉教区・群馬教区・栃木教区を齋藤圓眞教学部長らが視察した。中でも栃木教区の被害は大きく、他の教区でもこれらの教区では石灯籠や墓地の倒壊など被害が多かった。北総教区・南総教区(千葉県)では津波の被害を受けた寺院は無かった。

〔3月24日〕
【支援物資関連(1)】
各教区から支援物資が災害対策本部に届けられる。岡山教区(葉上観行宗務所長)からは4トントラックに満載されたカップ麺100箱、水120箱、その他生活用品など120箱が用意され、九州東教区(河野英信宗務所長)からは毛布16箱(160枚)、四国教区(関覚圓宗務所長)からは水200箱(2400リットル)が届けられ、被災地に配送された。

〔3月25日~〕
【支援物資関連(2)】
災害対策本部より被災地の拠点に支援物資を発送。対策本部・茨城教区の両拠点より継続的に支援物資を発送した。
・チャーター便に支援物資を載せ、陸奥教区中尊寺(岩手県平泉町)に発送した。中尊寺から被災地へは仏教青年連盟や中尊寺関係者が中心となり搬送した(3月25日・天台宗務庁

〔3月29日〕
【法要関係(2)】
比叡山延暦寺阿弥陀堂にて、天台座主猊下を大導師に、天台宗・総本山延暦寺内局出仕のもと慰霊法要を厳修した。
・犠牲になられた方々に哀悼の意を捧げられた(3月29日・比叡山延暦寺阿弥陀堂)

〔3月31日〕
【第1・2地区宗務所長臨時会議】
東京教区宗務所にて宗務総長をはじめとする天台宗災害対策本部役職員と東日本地区の教区対策本部長が集まり情報の共有、今後の対策について検討した。
板倉慈愼東京教区宗務所長(教区対策本部長)からは東京内ではすでに四十カ所の寺院で避難者の受入の体制を整えつつあり、被災檀信徒の大正大学をはじめ一般大学の就学生の下宿先にすることなどの具体的な支援策が提案された。

〔4月3日〕
【宗務総長・延暦寺執行の御見舞い】
天台宗宗務総長・延暦寺執行の御見舞い、現状報告を被災教区寺院に発送した。

〔4月9日~11日〕
【支援物資関連(3)】
災害対策本部から陸奥教区気仙沼市観音寺、石巻市東雲寺向け福恵善高一隅を照らす運動総本部長らが支援物資を搬送し、現地での支援物資配布の状況の確認をした。
・地震直後にはライフラインが寸断されたことから、カセットコンロなどの救援物資は、多くの檀信徒に大いに喜ばれたという(気仙沼市・観音寺)

〔4月14日~17日〕
【被災状況の調査(3)】
阿純孝天台宗宗務総長(対策本部長)、阿部昌宏財務部長、大角実豊延暦寺副執行らが陸奥教区災害対策本部(中尊寺内)、気仙沼市観音寺、石巻市東雲寺、東松島市萬寶院(津波により流失)、福島教区災害対策本部(本宮市・観音寺)、千用寺・妙林寺(ともに須賀川市)、永藏寺(白河市)、茨城教区災害対策本部(笠間市・茨城教区宗務所)を訪問した。
気仙沼市では、地震後大火災のあった鹿折地区を訪れ、回向法要を執り行った。また観音寺鮎貝住職からつぶさに被災状況の説明を受け、「物資の不足は徐々に解消しつつあるが、今後の檀信徒遺族の心が安まるように天台宗・総本山延暦寺により一層の協力をお願いしたい」との声に、阿宗務総長は長期的な視野に立っての支援を約束した。
・未だ膨大な瓦礫で埋め尽くされている被災地で祈る阿宗務総長、鮎貝住職ら(4月15日・気仙沼市鹿折地区) その後、津波で壊滅した東松島市大曲地区にある萬寶院の住職である石川仁徳師に話を聞いた。石川師は親族2名を津波で亡くし、寺院も流失してしまったが、石川師は各地の遺体安置所を廻ったり、支援物資を搬入したりと献身的に活動している。

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石巻市東雲寺では、鐘楼の屋根の崩落などの被害があったが、現地支援拠点となった。現状の課題などの説明を受け、今後の支援の対応についての要望を聞いた。 福島教区では、福島第一原子力発電所事故により依然、深刻な状況が続いているが、現状の支援はもとより長期的な支援の必要性について協議した。また、浜通り地区にある5ヵ寺の寺院の状況についても説明を受けた。
茨城教区でも沿岸部は甚大な被害を受けており、また北部でも福島第一原発から近いことから被害を心配する声があるなどの報告を受けた。
また気仙沼市役所、石巻市役所、北茨城市役所を訪れ、天台宗災害対策本部よりの義援金を副市長らに手渡した。福島教区では地元新聞社を通じて義援金を寄託した。
・首長会議で不在であった市長に代わり加藤慶太気仙沼市副市長に義援金を寄託(4月15日・気仙沼市市役所)

〔4月27日〕
【臨時宗議会の開催】
第122回臨時宗議会が開会される。半田孝淳天台座主猊下の導師のもと5月11日に気仙沼市観音寺で追悼慰霊法要が厳修されることが発表された。また、復興支援のため臨時会計予算が承認されて、一宗を挙げて支援活動を行っていくことが確認された。

〔5月5日〕
【現地支援活動(1)】
災害対策本部は、「こどもの日」にあたり、一隅を照らす運動総本部のイメージキャラクター「しょうぐうさん」のオリジナルノートをはじめ各種文具を陸奥教区・福島教区・茨城教区の教区対策本部を通じて各避難所の子供たちへプレゼントした。

〔5月8日〕
【現地支援活動(2)】
災害対策本部並びに一隅を照らす運動総本部の支援活動の一環として、東松島市大曲地区(萬寶院周辺)などで支援活動を実施(15日・22日と順次実施予定 50名程度/回)した。朝、避難所を出発、涌谷町の協力のもと温泉「天平の湯」を利用して頂いた。また、箟岳観光会館にて暖かい食事を、その後「箟岳山箟峯寺(天台宗・涌谷町)」を参拝した。
参加者の一人は、「温泉もソフトクリームも暖かい食事も震災後、初めて。久しぶりの休日らしい一日を楽しんだ」と語った。佐々木箟峯寺住職も「避難所暮らしも、復旧作業も長期化するので、たまには息抜きしなければもたない。少しずつ以前の生活を取り戻して貰えれば」と話した。同町民医療福祉センターの協力で看護師3名にも同行して頂いた。
・15日に行われた「温泉ツアー」には40名が参加した。 レポート〈天台宗の支援活動【1】〉

〔5月11日〕
【法要関係(3)】
海岸山観音寺(天台宗特別寺・気仙沼市)にて第256世天台座主半田孝淳猊下の御親修のもと、追悼慰霊法要がしめやかに営まれた。遺族、檀家300名が参列し、犠牲者の冥福を祈った。午後2時から開式した慰霊法要には、阿純孝宗務総長、武覚超延暦寺執行、山田俊和中尊寺貫首など僧侶約100名が出仕した。
座主猊下は参列した遺族らに「被災地の惨状を目の当たりにして、何とも切ない思いです。皆さんは決して一人ではありません。どうか亡くなった方々の分も生きて、この地元である気仙沼の復興に尽してください。」と語りかけられた。母と娘を亡くされたという参列した女性は「これで一つのけじめが付きました」と目を潤ませた。

・地震発生の2時46分には、黙祷が捧げられた。

〔5月31日〕
【臨時宗務所長会議】
第81回臨時宗務所長会議が、天台宗務庁にて開催された。対策本部の今後の復興支援策について説明し、各教区の支援を重ねて要請。さらに、復興支援金についても説明がなされ協力を求めた。

〔6月9日〕
【一隅を照らす運動・事前調査】
福惠善高一隅を照らす運動総本部長、見上知正同運動企画運営委員長らが、陸奥・福島・茨城教区宗務所を訪れ、災害対策本部の檀信徒支援策として取り上げようとしている「震災遺児に対する支援」「簡易仏壇の提供」などの支援について、聞き取り・事前調査を行った。


〔6月10日〕
【開運招福カレンダーの発送】
出版室にて刊行している「開運招福カレンダー」を現地からの要請もあり4千部増刷し、各被災地へ届けた。8月には新年版が完成するが、それらも提供する予定。

〔6月22日〕
【現地支援者との協議・於天台宗務庁】
現地で積極的に活動をされている支援者らから、現地の状況や今後の支援活動のあり方などについて聞き取りを行った。その中で他の支援団体や宗派の活動についても報告がなされた。
今後の活動については、小規模な避難所はまだまだ援助がおくれており、お盆を過ぎてもボランティアは必要であろうとの見通しが述べられた。各地で必要な援助については、行政が発信している情報を具に確認することが効果的であるとのアドバイスもあった。子どもに対する支援は、文科省の「子どもの学び支援ポータルサイト」に詳細に掲示されており、現地の声とともにこれらの情報を利用することが有効であるとの貴重な意見もあった。

〔6月27日〕
【復興支援募金のお願い】
災害対策本部は、被災寺院の復興、また被災檀信徒への支援のための「復興支援金」への協力を各寺院へ教区宗務所長を通じて依頼した。期間は平成24年3月末日まで。また、復興支援金勧募のポスターを作成し、配布した。

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