天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第222号

――青少年らに平和への思い繋げる――
比叡山宗教サミット34周年「世界平和祈りの集い」

 比叡山宗教サミット34周年「世界平和祈りの集い」が8月4日、比叡山延暦寺一隅会館前広場で開催された。新型コロナウイルスへの感染対策として日本各地の宗教者と初めてオンラインを活用して結び、世界平和と“コロナ禍”の早期終息を祈念した。式典の模様は、動画配信サイト「ユーチューブ」を通じて中継した。

 祈りの式典を継続させるべく、感染対策として代表者揃っての壇上での黙祷などは、オンラインを活用した方式を初めて採用。例年御臨席たまわる国内外の宗教代表者にも、動画中継を通じて共に祈りを捧げてもらうよう事前に案内した。

 式典は15時10分から阿部昌宏宗務総長の挨拶で開式。ステージ中央には大型ビジョンが設置され、左右のバックパネルには駒込高等学校と比叡山中学校の約400名の生徒らが平和への思いをしたためた色紙が奉納掲示された。
 
 森川宏映天台座主猊下は「今こそ、私ども宗教者は対話による相互理解を深め、『博愛』『利他』の精神に基づく連帯をより強固にし、共に祈り世界平和を希求し続けなくてはなりません」と〝お言葉”で呼びかけられた。

 続いてステージには森川天台座主猊下と東伏見具子全日本仏教会副会長が登壇。大型ビジョンに、ローマ教皇庁駐日特命全権大使のレオ・ボッカルディ師ら8名の諸宗教代表者が映し出され、「世界平和の鐘」の鐘打に合わせて1分間の黙祷が捧げられた。

 ローマ教皇庁諸宗教対話評議会のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット議長からは「祈りとは最も偉大な道具であり、この比叡山にて永く続く集いは、特に祈りが力強い瞬間である」とし、世界仏教徒連盟のパン・ワナメティー会長からも「この世界平和祈りの集いは、人類を平和的に団結させる仏法の力を示している」と期待が寄せられた。

 また、「平和への思い」と題した作文を比叡山高校3年の北脇賀凡(かほ)さん、オンラインで金光学園高校3年(岡山県)の兒山恵和(こやまけいわ)さんが朗読。その思いを受け、宗教者を代表し田中恆清神社本庁総長が将来への取り組みを約束する言葉を若者らに贈った。
 最後は、水尾寂芳延暦寺執行が平和への祈りと歩みを続けることを誓い明年35周年を迎えることを紹介し閉会した。

 なお、駒込高校の生徒らがミニ色紙に1人1文字ずつ書いて奉納した般若心経の展示や、比叡山高校の生徒らも共に「世界平和の鐘」を撞(つ)くなど、青少年たちにも参画してもらった。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける

『古今和歌集』仮名序

――梅の花に鳴く鶯や、水の中に住む蛙の声を聞くと、生きとし生けるあらゆる生きもののうち、和歌を詠まないものはいるのだろうか。(いや、すべての生きものは和歌を詠むのである。)――

 作品の序文として、さらに「和歌」という仮名を用いた文学的表現を当時の人々に示す役割を持った仮名序は、編者である紀貫之作。掲げた文の前には「やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける(和歌は、人の心を元として、様々な言葉となった)」と記されているとおり、心と言葉を結びつけ表現するという行為は、人間だけではなくすべての生きものに共通することであるということでしょう。

 古今和歌集の世界で「すべての生きものは和歌を詠む」と言ったその一方で、伝教大師さまは「もし、塀・壁・瓦・礫などの感情を持たない物には永久に仏性がないというのならば、心を離れてさまざまな物質や世界があるということになってしまいます」という考えを残されています。

 大乗仏教の教えでは、生きとし生けるものには仏の本性(仏性)がそなわるとしています。
それに加えお大師さまは、この世は心が変化し生まれたものであり、心をそなえていない存在はないと仰っています。それは心と言葉の結びつきならぬ、「心と仏性の結びつき」は、生きとし生けるもののみならず、この世のすべての事象に存在するのだということです。

 世情がいかにあろうとも季節は巡ります。今年も芸術の秋の到来です。それならば先人が残した精神に立ち返り、花を愛で、鳥をうらやみ、霞にしみじみと感動する事を大切に、今を享受していきたいものです。
せっかく、心を持ってこの世に生まれついたのですから。

鬼手仏心

最澄さまが持ち帰ったお茶のたね

 坂本を散策していると、京阪電車の坂本比叡山口駅の隣に朱塗りの柵で囲った伝教大師最澄さまゆかりの日吉茶園があります。立札によれば、入唐求法(にっとうぐほう)に際し天台山よりお茶の種子を持ち帰り、延暦24年(805)に植えられた我が国最古の茶園とのことです。

 伝教大師最澄さまは、天台山国清講寺で修学され、国清講寺が地主神「山王弼真君(さんのうひつしんくん)」を祀(まつ)っていたことから比叡山に山王権現を勧請(かんじょう)し比叡山を守る護法神としました。さらに天台山のお茶の木を増やして、坂本や各地に植栽(しょくさい)し人々の健康を守る病気予防とされたのではないでしょうか。

 自坊にも山王権現が護法神として勧請されており、お社近くにお茶の木もあります。
 私の幼少期には、田植えが一段落したころに近隣檀家の協力を得て寺参道脇にあるお茶の新芽を摘み、薪の火で蒸し上がった茶葉を手揉みした後、炭火で乾燥させてお茶を作っていました。

 孫と2人で今も残るお茶の新芽を箱いっぱいに摘み、電子レンジを使ってお茶が作れるか挑戦してみました。1時間程陰干しをしてから、皿にキッチンペーパーを敷きラップを掛けてレンジで数分あたためます。その後、手揉みをしてから更にレンジで乾燥させて出来上がりました。色は薄いけど、味と香りは絶品でした。
 伝教大師最澄さまが伝え広めたお茶かなと思うと、味わい深いものがあります。

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