天台宗について

The TENDAI Journal~天台ジャーナル~

天台ジャーナル 第187号

各教区に残された台風21号の爪痕
 日本列島を襲う相次ぐ天災 2日後には北海道で地震

 9月4日に上陸した台風21号は、西日本を中心に大きな被害を残した。また2日後の6日に、北海道胆振(いぶり)地方を震源とする地震が起き、大規模な土砂崩れや家屋倒壊が発生、広範囲の停電などが起き、北海道内に大きな影響が出た。北海道の地震では停電以外、天台宗関係の被害報告はなかったが、台風による大きな被害が報告されている。被災地の一日も早い復興が待たれるところである。

 本山関係では、延暦寺で倒木により居士林研修道場や食堂が破損するなどの甚大な被害が出た他、山内が停電。滋賀院門跡(小林隆彰門主)は倒木が多数あり、書院大屋根板壁が破損した。また一山寺院で倒木、屋根瓦の破損、漆喰壁落下などの被害がでた。
 滋賀教区では、湖東三山の金剛輪寺(濱中大樹住職)・百済寺(濱中亮明住職)・西明寺(中野英勝住職)で多数の倒木や屋根剥離などの被害、また同教区の44カ寺以上で、倒木、屋根瓦破損、壁剥離、門の破損、塀の倒壊などが起きている。
 京都教区は、妙法院門跡(杉谷義純門主)で壁の破損、庫裏、護摩堂の屋根破損や倒木多数があったほか、曼殊院門跡(藤光賢門主)でも倒木多数、塀や書院の雨戸破損など。また、毘沙門堂門跡(叡南覺範門主)では、弁天堂桧葺き屋根の破損、眞正極楽寺(奥村慶淳住職)で倒木による被害や位牌殿の瓦飛散などが起きている。教区全体では25ヵ寺から倒木や屋根損壊、門の破損、窓ガラス破損、土塀の倒壊などの被害が報告されている。
 近畿教区では、天鷲寺(澤田圓明住職)、本山寺(百濟寂仁住職)、神峯山寺(近藤眞道住職)、道成寺(小野俊成住職)など多数の寺で倒木被害。また松尾寺(高岡保博住職)や妙王院(寺田裕慶住職)では、倒木が本堂参道を遮断したり、電柱が倒れ庫裏側に傾いたりした。同教区全体では、26カ寺から被害報告があった。
 北陸教区では、中道院(西村智晃住職)で本堂漆喰壁の崩落、医王山寺(井上順圓住職)で金色堂屋根落下、庫裏破損などの被害。東海教区は、高田寺(柴田真成住職)で本堂(重文)檜皮破損や山門瓦の落下などの他、計6カ寺が被災した。三岐教区の華厳寺(久保寺美好住職)では、客殿屋根の銅板剥落、阿弥陀堂側面の壁崩壊、屋根瓦破損、などの被害があった。また同教区では、朝田寺(榎本義譲住職)、寶光院(鈴木孝慈住職)法輪院(久保寺福美住職)などでも被害があった。
 その他、東京教区の普賢寺(小野茂明住職)、埼玉教区の東泉寺(河野亮玄住職)、光明寺(鶴岡信顕住職)、常光院(小久保彰田住職)、茨城教区の清瀧寺(雪草洋幸住職)、山形教区の平泉寺(難波良淳住職)などから被害報告があった。また、天台宗務庁も防水シート破損などの被害があった。

素晴らしき言葉たち -Wonderful Words-

自然は人間に一枚の舌と二つの耳を与えた。
だから人は話すことの二倍だけ聞かねばならない。   

ゼノン(古代ギリシャの哲学者)

 インターネットの普及により、個人が自分の考え、主張を国内はもとより、世界に向けて発信できるようになって随分になります。
 その結果、発した内容によっては、まったく無名な一個人が、一夜にして有名人となることも、珍しくありません。
 そうなりますと、人間には他人から認めてもらいたいという欲望がありますから、我もわれもと、不特定多数に向けて発信がどんどんと増えてきます。
 これは一方的な言葉の発信ですので、会話としては成り立ちません。その発信に対するリアクションも、面と向かっての会話でないだけに、その発信に異を唱える誹謗中傷もかなり酷いものにもなります。
 発信者への批難が殺到する「炎上」などという言葉もよく聞きます。
 でも、こんな現象はごく最近のことです。たとえこのように通信技術が発達しても、人間社会から顔を突き合わせての会話は無くなりません。
 自分ばかりの主張を優先させて、相手の話に「聞く耳を持たない」ことは、やはり、良いことではないのです。
 顔と顔を合わせて会話をすることは、その表情や身振り手振りが言葉を補完し、微妙な心の動きを感じることもできます。
 また、たとえ批難の言葉を投げつける相手でも、じっくりと相手の話すことを聴くことで、その心を和らげ、落ち着かせます。
 このように、人の話をちゃんと聞くということの効用は大きなものがあります。IT技術の発達で自動化が進み、会話を交わすことなく物事が済んでしまう世の中にだんだんなっていくようです。
 でも、人間に一枚の舌と二つの耳が与えられている以上、人と人が相対する会話はなくなりません。それが、人間が人間である証でもあります。

鬼手仏心

これほど災害が多いとは  森定 慈仁

 歴史的に見てもこれほど自然災害の多い年はなかったのではないか。
 6月に大阪北部地震が発生、被災地の報道が冷めやらぬ中、7月の西日本豪雨。広島、岡山、愛媛など広範囲にわたり甚大な被害をもたらし、被災地では今尚、復興に取り組んでいる真っ最中である。
 7月末に発生した台風12号は一度三重県に上陸した後、行き先を見失ったかのように迷走を始め普段の台風とは真逆の方向へ、これまでに見たことのない進路を辿った。この台風を皮切りにどんどん台風が発生、台風15号以降、五日連続の台風発生は1951年の統計開始以来初めてのことだそうだ。
 そして台風20号、21号と立て続けに本土に上陸。特に21号は25年ぶりに「非常に強い」勢力で日本列島に上陸した。
 この台風により比叡山上では杉の大木が何本も倒れ、居士林の道場や食堂の建物に大きな被害をもたらした。
 そして、台風が温帯低気圧になって通り過ぎた直後の北海道での大地震である。胆振(いぶり)地方を震源とする地震は厚真町に大きな土砂崩れを引き起こし、たくさんの方々が犠牲になられた。また、この地震で北海道全土が停電になるなど北海道全体が大混乱となった。
 テレビの報道を見ながら被災地に対して「大変だなぁ」「かわいそうに」と思っていたところが次の日には自分の身にふりかかるという有様である。
 人気女性シンガーが「どうか地球さん落ち着いてください。お願いします」とツイッターでつぶやいて炎上したようだが、これだけの災害が立て続けに起こるとつぶやきたくなる気持ちもわからなくもない。
 犠牲になられた方のご冥福をお祈りし、被災地へお見舞い申し上げます。

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