天台宗について

法話集

No.131涅槃会を迎えて

 ご存知の通り、2月15日は「涅槃会」お釈迦様が煩悩の元である肉体を滅し、完全な覚(さと)りにお入りになった日、ひらたく言うと、お亡くなりになった日です。
 お釈迦様は生まれ故郷「カピラヴァストゥ」にお帰りになる旅の途中、「クシナガール」の地で鍛冶屋チェンダが貢いだ食べ物に当たり、沙羅双樹の林の中で静かに息を引き取られた。と伝えられています。
 この時、お釈迦様は頭を北に向け、顔を西に向けてお亡くなりになったところから、日本では死者を北枕にして寝かす習慣ができたと言われます。
 30年ほど前でしたか、「北枕は人間の理想の寝方である。死者ばかりではなく、健康な者も北枕で寝ると疲れが取れて良い。」と言う医学論文が発表されたことがありました。この日から私は頭を北に、顔は西に向けて寝るようにしていますがお陰様で大変元気です。

 さて、お釈迦様はこの最後の旅で様々な教え(大般涅槃経)をお説きになりました。その中で特に有名な言葉が「法灯明、自灯明(仏の教えを頼りとし、自分自身を頼りにせよ)」という教えです。
 この世との別離が近いことを悟られたお釈迦様のようすに気付いた弟子達が、「世尊がこの世を去られた後、私たちは何を頼りに生き、何を頼りに修行をしていけば良いのですか?」と尋ねると、お釈迦様は「私が説いた教えを頼りとしなさい。私が説いた教えに従って修行している自分自身を頼りにしなさい。それ以外を頼りにしてはならない。」と言い残されたのです。
 高度情報化の時代となり、何が真実で何が偽りかの判断が難しく、何を信じ、誰を頼って良いのか解らない世になってきました。
 こんな時代だからこそ「法灯明、自灯明」の教えが重みを増してきたのではないでしょうか。

 今、私たち仏教徒は「御仏は私たちを正しい方向に導き、苦悩を救ってくださる。」との確信を得るために、一心に掌を合わせ、お経を読み、み教えを学ぶことが求められています。 拙寺では涅槃会には涅槃図を掲げ、参拝の信徒と共に遺経をお称えして、日頃の行いを懺悔し、お釈迦様のお徳を讃え、お釈迦様の鼻くそ(お菓子)を頂戴して、お釈迦様のお徳にあやかり、信仰を深めていこうと誓い合っています。
 皆さんの菩提寺でも様々な行事が営まれると思います。機会ある毎に菩提寺へご参拝頂き、各種行事に参加してご住職から御教えを拝聴し、「自灯明」と成り得る自分自身を育て上げて下さい。                                

合 掌

(文・清水谷 善圭)
掲載日:2015年02月01日

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