天台宗について

法話集

No.122今日を生きてる運のよさ

 今は、いろいろなエンターテインメントに押されて聞く機会もなくなりましたが、三味線の音で弾き語りされる都都逸(どどいつ)は、人生の言い得て妙な生き様を軽妙洒脱にとらえた名文句の宝庫です。
 なかでも青木仙十作、
 「くじも当たらず出世もなくて、今日を生きてる運のよさ」
は、傑出しています。
 人は、まわりを見て自分のことを知ります。世間的な常識のことも分別と言います。分別心をもつことはおとなの条件ですが、分別だけですと最後には虚しさが残ってしまいます。
 「上を向いたらきりがない、下を向いたら後がない」
この虚しさを、無理して満たそうとすると、上にはねたみ、下に向けてはおごりのこころが生じます。
 せっかちで落ち着かない分別を止めてみると、元気でいるからこそ、喜びもくやしさもあるのだと気づきます。すると、一時のくやしさにとらわれない新たな元気が得られます。人生にくやしいことがあったら、いったん引いてみましょう。こころの虚しさは、分別にもとづくつまらぬこだわりから来ることが分かります。こころの置き所の転換、それがストレスを解消するのです。
 もう一題、「諦めましたよ、どう諦めた、諦められぬと諦めた。」
色恋話を別にして、これが、転換させることによるストレス解消の論法です。このような転換を試みると、世界は不思議と面白いものに見えてきます。
 「今日を生きてる運のよさ。」 どうです?
わだかまりがとれて、こころが晴れ晴れとするでしょう。


(文・渡辺明照)
掲載日:2014年05月01日

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